<引用元:ナショナル・レビュー 2020.10.28>ダグラス・カー著
COVID-19不況からの回復は、歴史的水準からみて著しく迅速
米国はわずか12年のうちに、2つの最も厳しい景気停滞を経験した。2008年の金融危機とコロナウイルス・パンデミックだ。
どちらの不況もうんざりするような損失を与えた。2008年の危機は、2009年第2四半期に2007年第4四半期から4.0パーセントのGDP低下を引き起こした。コロナウイルス・パンデミックは、2019年の最後の四半期から2020年の第2四半期までに、より短い期間でより著しい10.1パーセントの低下を引き起こした。GDPデータは四半期ごとにしか出ないため、月ごとの経済統計がトランプ・ペンスとオバマ・バイデンの回復を比較する上での基準となる。
GDPに加えて、広く認められた重要な指標には、非農業部門就業者数、小売売上高、工業生産高、耐久財受注、そして住宅着工件数があり、全てが毎月評価されている。
下の表ではこうした指標の比率の変化が、不況前の月から底、つまり不況の底値に至るまでと、底値から5カ月後に評価されており、不況に関する権威として広く認められた全米経済研究所(NBER)が規定する期日を使用している。NBERはまだパンデミック不況の終わりがいつか規定していないが、恐らく2020年4月が選択されるだろう。
いずれの不況も世界大恐慌以来で最悪の落ち込みの1つになった。COVID-19不況では、雇用と小売がより悪く、2008年の危機では工業生産高、耐久財、住宅着工件数がより悪かった。それぞれのカテゴリーで、トランプ政権の回復は、オバマ・バイデン政権より劇的に強力だった。小売と住宅着工件数は、オバマ政権よりトランプ政権のほうが、25倍から100倍速く伸びた。工業生産と耐久財受注は、当時より現在のほうが3倍以上速く上昇した。雇用はトランプのほうが9.5パーセント速く増加した。
オバマ・バイデンの回復は、はるかに遅く、次の表で分かるように、トランプ回復の最初の5カ月で見られる増加を果たすのにさらに多くの月を要した。
トランプ政権が5カ月で獲得した雇用増加と小売り売上高を生み出すのに、オバマ・バイデン政権では6年以上を要した。工業生産高、耐久財、そして住宅着工件数はすべて、オバマ・バイデンよりトランプの下ではるかに急速に伸びた。
トランプ批判者は、パンデミック不況をトランプ政権のウイルス対応の失敗のせいだと言っている。どのようなつまづきがあったとしても、米国経済は、コロナウイルスに対して多かれ少なかれ、異なる対応を実施した場合と同等の経済よりも、高いパフォーマンスを出している。国際通貨基金は、2019年から2021年まで、米国はユーロ圏と日本より3パーセント以上速く成長するだろうと予測している。
確かに2つの大きな不況は、多くの点で似通っているが相違点もあり、経過が完全に比較できない恐れもあるが、厳密に比較する必要はない。オバマ・バイデン回復の最初の低調な5カ月は、米国の歴史上で最も遅い回復という結果をもたらした。パンデミックからの完全な回復までは、まだ長い道のりが残っている(そして、まだ分からないが、第2波の可能性も残る)が、トランプ政権の最初の5カ月の回復は、米国で史上最速のものだ。
ダグラス・カーは、金融市場・マクロ経済学研究者。シンクタンク研究員、教授、会社役員、投資銀行家の経歴を持つ。