<引用元:ザ・ヒル 2019.5.12>スティーブン・ムーア氏による寄稿
私は自由貿易主義者であり関税――つまり消費者の税金――が嫌いだが、懲罰的関税を課すのに最適な時があるとすればそれは今であり、それは中国に対するものだ。トランプ大統領は今回のものについては善の側であり、今は中国の悪い貿易慣行を永久に遮断するのに適切な時期だ。
基本的な事実から始めると、トランプがホワイトハウスに入った頃中国に課していた関税の平均は、約4パーセントだった。中国が我々に課していた関税は約10パーセントで、2018年にトランプが中国からの2,000億ドル分の輸入品に最初に課した10パーセントの関税を含めても、我々の関税は中国よりまだ低かった。つまり、中国国内での同国政府による非関税障壁のためにそこでビジネスを行うのに法外に高い費用が掛かるとするなら、競技場は平らではなくことのほか我々に不利に傾いているのだ。我々は、ドアがパタンと閉められた世界2位の規模の経済に対して、自由市場で挑んでいる。
理論にこだわる自由貿易主義者は、この現状が経済的に、そして政治的にいずれは維持できないものだと理解するべきだ。貿易は一方通行ではありえないし、ここで何らかの譲歩が必要だ。それは、中国の重商主義的な経済行為における迅速な改革を意味している。――関税、他の貿易障壁、知的財産権の窃盗、そして米国に対するサイバースパイに関して。我々がここで取り組んでいるのは友好的な力ではなく、実存的脅威となったますます敵対心を強める力だ。
トランプの戦略は、中国の脆弱な経済に関税と高圧的手段で強い打撃を与えて、米国の企業と製品が中国市場にもっと大きく入り込めるようにさせることだ。トランプが中国の習主席に要求していることで、理不尽なことは1つもない。自由貿易主義者は、もしトランプの関税が効けば――これが危ない綱渡りであることは認めざるを得ないが――最終的にはもっと自由な貿易が実現できるということを認識すべきだ。
確かに、ここでのリスクは貿易戦争が高まって全ての人が貧しくなるということだ。これは賭ける価値のあるギャンブルだ。トランプは現在米国が中国に対して持つ戦略的優位性を活用しようとしている。中国は輸入を基盤とする経済であり、米国の何兆ドルもの消費者市場を無制限に近く利用できる環境で育成されてきた。彼らは誠意をもって交渉しないことで、5,000億ドル以上の年間売り上げを危険にさらし、経済と株式市場の破綻を招こうとしている。
こうした関税は米国の消費者が負うことになるという不満の声が広がっているが、それは大げさかもしれない。前回の10パーセントの関税が輸入価格に与えた影響は最小限のものだった――ウォルマートで販売される商品が値上げされるというより、中国企業が自分たちの利益の中から関税分を吸収したことを示唆している。中国自体で費用の多くを受け入れたのだ。
今回のトランプの対立のタイミングは、この上もなく抜け目のないものだ。米国の経済は上々であり、株式市場もそうだが我々もこれを乗り切れるほど調子がいい。一方中国政府は、トランプの要求をこけにしたことで大きく計算を誤った。彼らはこの問題に関するトランプの決意を過小評価した。私はトランプのことを知っている。彼がこれを取り下げることはないし、中国はさらに抜け出すのが難しい深刻な状況に陥ってしまった。
また中国は米国人の決意と中国に対する高まる反感について計算を誤った。チャールズ・シューマー(民主党、ニューヨーク)が、中国について親トランプのツイートをしたことは、中国の経済的、軍事的不正行為に米国人が感じているフラストレーションを示すものだ。シェロッド・ブラウン(民主党、オハイオ)をはじめ他の民主党員にも、関税を支持している人たちがいる。珍しく党派を超えて、米国は中国に立ち向かうべきだという意見で一致している。
自由貿易主義者がやるべきこと――もし建設的でありたいと望むなら――は、トランプが米国・メキシコ・カナダ通商協定を可決するのを助けることだ。それによってさらに中国を孤立させ、国際貿易を拡大させることができる。ナンシー・ペロシ下院議長(民主党、カリフォルニア)は、愛国者としての義務を果たし、北米自由貿易協定を21世紀に持ってくるべきだ。少なくとも彼女は、下院で賛否を問う投票をさせるべきだ。
この米中貿易不和は、我々の生涯の壮大な経済戦争となりそうなことの中では最初の小競り合いだ。トランプが勝てば自由で公正な貿易の未来はもっと改善される。中国が米国に引き下がることを強いれば、自由貿易は致命傷を負うだろう。これは自由貿易主義者にとって、また全世界の繁栄にとって非常に悪いニュースとなるだろう。だからこそトランプは勝たねばならない――そして勝つだろう。
(スティーブン・ムーアは大統領選挙でドナルド・トランプの経済顧問を務めた。最新の著書は、アーサー・ラッファーとの共著「Trumponomics: Inside the America First Plan to Revive Our Economy.」)