<引用元:ニューヨーク・ポスト 2019.4.19>ソラブ・アマーリ氏による論説
一流メディアは釈明すべきことがある。――国民に「共謀」と「司法妨害」という長く厳しい試練を受けさせたことに対して。約2年と数百万コラム・インチ分の報道の後、ロバート・モラー特別検察官は、トランプ大統領とその選挙陣営がロシアと共謀したという説がそれだけのことだったことを明らかにした。
共謀と司法妨害が残したものは、メディアの粉砕された信頼だけだ。
逸脱した記者と評論家――最も言語道断なウソを広めた人たち――は、先に進むことしか頭にない。だがちょっと待て。最大の混乱を引き起こしたことに対する説明責任が必要だ。
以下に、数ある中から最悪の10個を選んだ。
10位:コミー証言に対するCNNの不手際
FBIのジェームズ・コミー元長官の2017年6月の議会証言の、最も重要な点で完全にしくじるまで、4つの署名入り記事――CNNのジェイク・タッパーやグロリア・ボーガーといったスターの記事も含めて――が出された。CNNによると、コミーが大統領に自身(大統領)が捜査対象でないと言ったというトランプの主張に、コミーは異議を唱えるだろうということだった。残念!コミーは実際には、トランプの立場に異議を唱えず、タッパーとその他の人々は自分たちの大スクープを覆して訂正しなければならなかった。
9位:NYタイムズのコラムニストが熱烈な夢を紹介
ニューヨーク・タイムズのコラムニストであるチャールズ・ブロウの、2018年12月2日のコラムは彼の基準から見ても馬鹿げていた。「トランプ・チームのメンバーは、ロシア人から受けられる支援に極度に関心を持ち、しきりにそれを受けたがっていた。それは明白だ」と彼は書いた。実際それは明白ではなかった。モラーの捜査では「トランプ陣営のメンバーがロシア政府と共謀したことは立証できなかった」とレポートには書かれた。ブロウが失敗から学んでくれることを期待する。
8位:ワシントン・ポストの「ファクト・チェッカー」にはファクト・チェックが必要
「All the Known Times the Trump Campaign Met With Russians」という見出しが、ワシントン・ポストの2017年ファクト・チェッカー記事に出ている。だがファクト・チェックと言いながら、同紙は実際にはリベラル正統派の主張に反する様々な主張を批判している。そのいい例がこれだ。問題となった主張は、「ロシア」は「民主党の敗北を埋め合わせようとするためのフェイクニュース」だとトランプが抗議していることだ。ワシントン・ポストはそれを「間違い」と認定した。モラー報告書は逆のことを示唆している。
7位:MSNBCのスパイの話は無視した方がいい
ジョン・ブレナンほど情報機関の信頼性に大きなダメージを与えた米国の高官はいない。モラー報告書に先立って数カ月間、CIA元長官はMSNBCで絶えずナンセンスな共謀説を示していた。先月ブレナンは、「ロシア人と米国人が関わる共謀の犯罪」をめぐって、トランプ関係者と家族に対して「金曜日(3月8日)が大陪審の起訴が言い渡される日となる」と自信を込めて予測した。それは間違っていた。
6位:ガーディアンが共謀の会議をでっち上げ
海外メディアの中ではガーディアン程恥ずべきところは他になかった。英国の同紙は、2018年11月にある記事――署名は大物記者のルーク・ハーディングと他2名だったが、その後1名は不思議なことに同紙のウェブサイトから姿を消した――を出した。トランプ陣営の元責任者のポール・マナフォートと、ウィキリークスのジュリアン・アサンジがロンドンのエクアドル大使館で行った秘密の会談についての記事だ。寛大に見ても情報源は根拠に乏しく、そのとおり、ザ・インターセプトでグレン・グリーンウォルドは「(モラー)レポートで、(マナフォートが)ジュリアン・アサンジのもとを訪れたという記述はもちろん、それをほのめかすことも一切ない」と指摘している。
5位:ワシントン・ポストのコラムニストが誇張した消えることのないウクライナの話
共和党全国大会を前に「トランプ陣営は、共和党の新綱領ではロシアや反乱軍と戦うための武器をウクライナに提供するよう求めないように、水面下で動いていた」。そう報じたのはワシントン・ポストのジョシュ・ロギンだ。やがて――モスクワに恩義を受けキエフを裏切ることを決心したトランプ陣営幹部の――話は独り歩きした。だがそれは間違っていた。モラー報告書で指摘しているように、共和党政策綱領に対する修正は「トランプ候補やロシアの要請で着手」されてはいなかった。(注記:トランプは、前任者が拒否していたウクライナへの武器売却を許可した。)
ロギンの2016年7月のワシントン・ポストの記事は、ウクライナに関する共和党政策綱領の変更へのトランプ陣営の関与について誇張していた。ある陣営スタッフは、上の許可なく、ウクライナへの支援の拡大を推進したが、それに武装化は含まれていなかった。
4位:アトランティックがジェフ・セッションズを非難!
ジュリア・ヨッフェという興奮しやすい若い記者が、ある記事をアトランティック誌に書いた。セルゲイ・キスリャクロシア大使と会ったのは、トランプの代理としてではなく当時の米国上院議員としての立場上の通例だとジェフ・セッションズ前司法長官は主張していたが、数千ワードに達する記事はその主張に疑問を投げかけた。ヨッフェは、セッションズ=キスリャク会談がトランプ陣営に対するロシアの怪しい影響力をさらに強く意味するものだと示唆した。ヨッフェの記者としての信頼性も、問題の会談は「大統領選挙戦については付随的な言及以上のものは何も含まれて」いなかったと述べたモラー報告書の犠牲者として記念しておこう。
3位:デイビッド・コーンのスティール文書大失敗
全ての始まりはその文書だった。2016年10月、選挙の数日前、マザー・ジョーンズのデイビッド・コーンは、ある匿名の「西側の某国の元情報機関高官」、クリストファー・スティール(当時は匿名)が、ロシアがトランプを脅迫することのできるネタを握っていると主張しているという記事を書いた。こうして悪名高い「スティール文書」とトランプの「おしっこ」ビデオに関して深夜に絶え間なく語られるジョークが生まれた。だがモラー報告書はほとんど文書に触れておらず――その奇妙な主張を全く裏付けていない。
2位:マクラッチ―がプラハでマイケル・コーエンを捕捉
文書といえば、トランプの相談役だったマイケル・コーエンが、おそらくロシアの卑劣な指令役と会うために、「2016年の大統領選挙中に夏の終わりのプラハをひそかに訪れた」証拠をモラーが握っていると、マクラッチ―のグレッグ・ゴードンとピーター・ストーンが報じたのを覚えているだろうか?この1つの容易に検証できる主張が立証されれば文書の他の部分も立証できると、マクラッチ―の記者は述べた(またおそらくは密かに願ったのだろう)。この件に関するモラー報告書の答えはこうだ。「コーエンはプラハを訪れたことはなかった」。「面目を失う」はチェコ語で何と言うのだろうか?
1位:バズフィードはコーエンに嘘をつくように言ったのが誰か知っている
卑しむべき物語全体の中で最も大きな混乱。それは、ジェイソン・レポルドとアンソニー・コーミアーが1月に書いたバズフィードの記事だろう。トランプがコーエンにモスクワでのトランプタワー建設の話について議会に嘘を言うよう指示したというものだ。その点についてモラー報告書はこう言っている。「大統領は(コーエンに)偽証するように指示していない。コーエンも予定されている証言について大統領に話をしなかった」。いててて。
するとバズフィードはきっと正直に訂正し、謝罪しているだろう。そうじゃないか?それは甘い。その代わりに、ベン・スミス編集長は複雑な自己防衛を発表し、「最終的な判断をするのはモラーである」ことを渋々認めただけだった。
トゥービンの「ブロンド的」瞬間
不名誉な言及は、ニューヨーカーの常勤ライターでCNNの法律アナリストのジェフリー・トゥービンにも向けられるはずだ。彼は昨日は共謀に執着していたのに今日になって即座に司法妨害に方向転換したのだ。
トゥービンはトランプ大統領が司法妨害で有罪だということが分かっていたという。なぜか?それは大統領がウィリアム・バー司法長官を通じて、共謀捜査に長く不満を示してきたからだ。
「満足している人は司法妨害を行わない。リークと捜査に対するトランプの不満が、無罪ではなく有罪だという証拠だ」とトゥービンはツイートした。
その言葉は言うまでもないが、同じようにほとばしり出た法律に関するある機知と知恵を即座に思い出させるものだった。――「Legally Blonde(邦題:キューティ・ブロンド)」で女優のリース・ウィザースプーンが演じた主人公のエル・ウッズのセリフだ。
「満足している人は自分の夫を撃ちません」とウッズは映画のある場面でクライアントを弁護して言った。
ところが、他のツイッターユーザーはもっとダークな対比をした。@NeonTasterはトゥービンに対して「怒りの無罪宣言自体が有罪の証拠だ」とツイートした。あなたが分析しているのはモラー報告書なのか、それともフランツ・カフカの「審判」のヨーゼフ・Kの裁判なのか?
読者への教訓:共謀と司法妨害に取りつかれた人たちが、自分たちの媒体をこのような最悪の状態にした思想的な単一思考とプロらしからぬ態度を見直すことを、期待してはいけない。
ソラブ・アマーリはニューヨーク・ポストの論説編集者