<引用元:ザ・ヒル 2019.1.16>ジョン・ソロモン氏による寄稿
FBIのロシア捜査における間違いと乱用の歴史がついに綴られる時が来れば、私の消息筋によると、ブルース・オーがほぼ間違いなく証人ナンバーワンだ。
当時司法省高官だったオーは2016年夏、FBIと司法省の高官にクリストファー・スティールのロシア文書について状況説明を行い、そのイギリス情報局工作員の仕事がヒラリー・クリントンの選挙陣営とつながりのある対立候補調査であり、偏向の可能性があると明確に警告していた。
2016年の7月と8月のオーの報告会議には、FBI副長官、当時のロレッタ・リンチ司法長官の上級顧問弁護士、そして後にロバート・モラー特別検察官のチームの幹部検察官となる司法省高官も参加していた。
当時オーは司法次官代理だった。ところが数週間後、政治的な偏向についての彼の警告は、FBIが連邦裁判所から取得した外国情報監視法(FISA)令状からはあからさまに除外され、トランプ陣営が2016年の大統領選挙を乗っ取るためにロシアと共謀したかについて、スパイする許可が与えられた。
オーの行動は、私が消息筋から探り出した手書きのメモと証言に記録されており、FBIと司法省の高官が、選挙日のわずか数週間前に、トランプのアドバイザーだったカーター・ページを対象とした令状を熱心に取得しようとして、2016年10月に連邦判事を欺いた可能性があることを証明するこれまでで最大の証拠を提供している。
またそれらは、下院民主党がロシア疑惑についての公式な情報の結論として主張してきた、主要な内容とも矛盾している。
スティール文書がFISA令状を裏付ける中心的な証拠となったことが昨年公表されてから、司法省とFBI当局は、スティールの報酬がクリントン陣営と民主党全国委員会(DNC)の弁護士事務所からいつ支払われたのかについて、明言を避けてきた。
昨年公開された黒塗りされたFISA申請書は、FBIが、DNCやクリントンとのつながりに全く触れていないことを示している。それどころかFBIは、トランプとロシアについて調査を行う目的で、米国の法律事務所のために働く人物に雇われたスティールを、過去の刑事事件捜査での信頼できる情報源であるとしていた。
FBIは、スティールについての「中傷的な情報には全く気づかなかった」し、スティールは「調査の背後の動機に関して・・・知らされなかった」が、FBIはスティールの雇い主がトランプ陣営の「信用を落とす情報を探しているようである」と「推測する」と主張した。
だが、昨年夏の議会捜査団に対する証言で、オーは、FBIと司法省の弁護士は推測の必要がなかったことを暴露した。というのもオーは、2016年7月31日に始まる一連の接触で、スティールがトランプに偏見を抱いていると表明しており、クリントン陣営につながりのあるプロジェクトに従事していることを、彼らに明確に警告していたからだ。
オーは動機と依頼主について直接の知識があった。つまり、2016年7月30日にスティールに会ったばかりであったし、オーの妻のネリーは、スティールの雇い主と同じ会社であるフュージョンGPSの仕事をしていた。
オーは議会捜査団に「私は確かに、フュージョンGPSが協力しており、ドナルド・トランプに対する対立的調査を行っているとFBIに伝えた」と語り、FBIとスティールが会話の中で偏見を示したことを警告したと付け加えた。
オーはこう話した。
「話した通り、クリストファー・スティールはトランプに絶対に当選しないで欲しいと望んでいるのだと思った時、私はFBIに情報を提供した。つまり、もちろん私はそれをFBIに伝えたのだ」FBIになぜその情報を提供したのかと念を押されると、オーは「何らかの偏見やそういったものがあるといけないからだ」と答えた。その後彼はこう付け加えた。「私がそれをFBIに伝えた時、これが情報源の情報であり、どれだけ信頼できるか分からないということをはっきりさせようと努めた。確認して注意しなければならないだろう、と」
オーはさらに踏み込んで、自分の妻とスティールが同じ会社に雇われており、その会社がトランプに対する民主党の競争相手であるクリントン陣営の要請で、トランプとロシアの調査を実施しているのだ、とFBI捜査官に明かしたと述べた。
「この人たちはクリントン陣営に関係している者に雇われていたのだから、注意しなさい」と、オーは自分がFBIにどう警告したかを議員に説明した。
2016年の選挙中にDNCとクリントン陣営両方を担当していた法律事務所、パーキンス・クーイは、候補者と党のためにスティールが行った仕事のために、フュージョンGPSに代金を支払い、実際は対立候補の調査だったのに、支払いを弁護料として偽装したことを後になって認めた。
オーは、スティール文書とDNCとのつながりを知っていたか問われると、プロジェクトが実際クリントン陣営とつながりがあると思っていたと答えた。
「DNCに雇われていたかは知らなかったが、彼らがともかくクリントン陣営のために働き関係していたことには、まさにその通りだと私は話した」とオーは答えた。
「自分の妻がフュージョンGPSのために働いていた、つまりフュージョンGPSの仕事を請け負っていたこともFBIには伝えた」
オーは、FBIの当時の副長官のアンドリュー・マッケイブと弁護士のリサ・ページに接触した時、FBIとの最初の接触が2016年7月31日だったと打ち明けた。その後彼は、ロシアの対諜報活動を行う捜査官に差し向けられたが、そこにはトランプ共謀捜査の開始で中心的役割を演じ、今は解任された捜査官のピーター・ストラックも含まれていた。
だが、スティール文書についてオーが接触したのは、FBIだけではなかった。オーは、2016年8月――FISA令状が発行される約2カ月前――に、司法省高官に状況説明を行うよう求められたと述べた。
彼が状況説明をした者の中には、当時の司法省刑事部門のトップのアンドリュー・ワイスマン、長年司法省の国際活動を率いてきたブルース・スワルツ、そして当時上級法律顧問としてリンチの仕事を割り当てられた、熟練のテロ担当検察官であるザイナブ・アーマッドがいた。
アーマッドとワイスマンは、ロシア捜査を監督する特別検察官のモラーの下で継続して働くことになった。
またオーの広範な証言は、下院民主党が昨年主張しようとした内容を損なっている。
共和党が2018年の初めに、最初にオーとスティールのつながりについて質問した際、下院情報委員会の民主党議員は、オーはスティールが2016年11月にFBIに解雇されてから、FBIの情報提供者として働いていただけだと主張し、つながりを最小限に評価しようとした。
アダム・シフ(民主党、カリフォルニア)下院議員のチームによる覚書では、オーのFBIとの接触は、「選挙から数週間後の、裁判所が最初のFISA申請を承認して1カ月以上後」になって始まったものだと主張していた。
だがオーの証言で、FISA令状発行や選挙が行われるずっと前に、彼がFBIと司法省高官に話し始めていたことが明らかになり、その主張の嘘が暴かれた。
また彼の詳細な回答は、FBIによるスティール資料の説明に対して非常に不利な反証を提供している。
実際、FBIはスティールについての中傷的な情報を得ていた。なぜならオーは、スティールが自分が調査している人間を打倒しようと必死であり、偏見を持っていたことを明確にFBIに伝えていたからだ。
またFBIは、依頼主の動機を知っており、推測する必要はなかった。なぜならオーは、民主党の候補者の陣営がトランプの当選のチャンスを損なうために計画された調査につながりがあったことを、捜査官に伝えていたからだ。
そのような怠慢は、本質的にFISA制度の乱用である。
解任されたジェームズ・コミーFBI元長官自身、FISA裁判所は自主管理制度に依存していると先月証言し、そのことを認めた。つまりFBIはそこで、無罪を証明する証拠を裁判官に公表することになっているのだ。
コミーは2018年12月7日にこう証言した。
「我々は、連邦裁判官との信頼関係のために、自分たちが伝えているのと著しく異なる状況を示す証拠を提出するのは、確かに義務であるとみなしている。我々は、申請を検証する裁判官に、短所と長所の両方の、証拠の全体像を示したいと考えている」コミーは、自らに次ぐ高官であったマッケイブが最初に連絡を受けていたというのに、オーがスティールに接触したことについて知らなかったと主張している。
だがそうしたところで、その問題のことで、つまりオーからの肝心な無罪を証明する情報をFISA裁判所に明かさなかったことについて、コミーのFBIまたは司法省が罪を免れることはできない。