<引用元:ヒル 2019.9.20>ジョン・ソロモン氏による論説
数十年前私が若いジャーナリストだった時、ワシントン取材の研修中、指導者の1人が賢明な助言をくれた。米国のインテリジェンスと外交に関しては、物事は最初の印象通りでないことが多いというのだ。
その言葉が今日、最初の日と同じくらい強く頭の中で響いた。そして最新のニュースの後、大統領の顧問弁護士であるルディ・ジュリアーニが、ウクライナ政府に接触したことに関する狂乱と関連するものだと気づいた。
報道ではジュリアーニが、2020年にトランプの挑戦者となる可能性のあるジョー・バイデンと、息子のハンターの同国での商取引に関するスキャンダルを掴みたいというだけの理由から、今年の夏にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー新大統領のチームに接触したと示唆している。
ジュリアーニの動機には政治や法律が含まれる可能性もあったが、どちらも違法ではない。
だが米国民が本当に起きたことを評価するために必要な話には、欠けた部分がある。つまりジュリアーニが今年の夏、ゼレンスキーのアドバイザー兼弁護士のアンドリー・イェルマークに接触したのは、米国国務省が働きかけて促進したものだった、ということだ。
ジュリアーニが始めたことではなかったのだ。米国の上級外交官が7月に彼に連絡し、イェルマークを彼に結びつける許可を求めた。
その後ジュリアーニは8月初めに中立地――スペイン――でイェルマークと会うと、その会談の一部始終を国務省に報告した。
私が検証した電子的通信記録と実施したインタビューによると、その報告は8月11日に電話で2人の米国上級外交官との間で行われ、1人はウクライナ担当者、もう1人はEU担当者だった。
ジュリアーニは20日に質問に答え、国務省が彼にイェルマークと会談するよう求め、実際彼は米国当局者にその一から十までを伝えたと述べた。
「彼(イェルマーク)が一体どういう人物かも私は知らなかったが、彼らが保証すると言った。実際彼らは、彼は公正な仲介者のようだからといって私に話をするよう強く促した。私はイェルマークと話した内容を彼ら(2人の国務省高官)に報告した。以上はすべて国務省の要請で行ったことだ」とジュリアーニは私に話した。
つまり、ジュリアーニの接触は、単なる政治的なライバル候補調査活動というより、新たに政治と外交の世界に進出した元テレビコメディアンである、ウクライナのゼレンスキー新大統領との信頼関係を醸成しようという国務省の外交努力の一環だった。
なぜウクライナはジュリアーニと話したいと考え、またなぜ国務省はその促進に関与するのだろうか?
十数人以上のウクライナ人と米国当局者とのインタビューによると、最近その地位を離れたペトロ・ポロシェンコ大統領と現在のゼレンスキー大統領の下で、ウクライナ政府は2018年の夏以降、オバマ時代に米国の法律違反に関わった恐れがあると考えられる米国人の行為に関する証拠を引き渡そうとしてきた。
ウクライナは、米国当局に自分たちの訴えを渡そうという取り組みが、最初キエフの米国大使館によって阻止されたとしている。大使館が、彼らの訪米を許可するビザをタイムリーに発行しなかったためだ。
それからウクライナはニューヨークの米国連邦検察局に不正の証拠を引き渡すために、元米国連邦検事――ジュリアーニではない――を雇ったが、連邦検察は対応しなかった。
立派な米国人であるその元米国連邦検事は、ウクライナの話が真実であることを私に認めた。ウクライナ当局者が伝えたかった疑惑は、ジョー・バイデン副大統領が米ウクライナ関係を扱う間、その息子がウクライナで金儲けしようとしていたことと、民主党全国委員会がウクライナに圧力を加えて2016年大統領選挙に干渉させようとしたことの両方に関するものだった、と元米国連邦検事は私に語った。
最終的にジュリアーニは2018年11月に、ウクライナの疑惑の噂をかぎつけて調査を開始した。
トランプ大統領のひときわ注目を集める弁護士として、単に「ルディ」として知られることも多い元ニューヨーク市長は、ウクライナの証拠が、ロシア共謀捜査とロバート・モラー特別検察官の最終報告書に対する弁護に役立つ可能性があると考えた。
そこでジュリアーニは2018年の終わりから2019年初めに確認を始めたが、ウクライナに足を踏み入れることはなかった。また、ジュリアーニが高官と会って疑惑の話をするためにウクライナを訪れることを検討しているという話を、ウクライナ当局者がリークし――またそれが米国で政治的に利用された時、ジュリアーニは突然訪問を取りやめた。彼はウクライナ当局者との話すのをやめたのだ。
その時以来、ウクライナ当局者は、ジュリアーニにないがしろにされたことで、その最も有名なクライアントであるトランプと自分たちとの関係が損なわれる可能性を懸念した、と米国と外国の消息筋は私に伝えている。
またトランプ自身が、2年以上の間広まっていた不正疑惑の証拠を浮上させるために、ウクライナの指導者たちにジュリアーニと協力するよう勧めることで力が増し加わった、と私の消息筋は述べた。
国務省が7月にジュリアーニに提案した事は、外交上の軽視の不安を和らげ、ウクライナの新政権に2つの同盟国間ですべてが順調だと明確に伝えるために計画されたものであったようだ。
ゼレンスキーの顧問弁護士がトランプの顧問弁護士と話すことができれば、全ては修復されるだろうという考えだった、と当局者は私に説明した。
ウクライナ当局者は、米司法省の注意を引こうという試みが失敗してから、証拠をまとめて米国議会に正式に送るための議会委員会を作る可能性も非公式に協議している、と私の消息筋は話す。
2つの国が外交的課題のかじ取りをし、またたとえ米国民に明らかになっていないとしても、多くの場合そうであるように一般市民との不正な活動が策略の一部である場合、その様な仕組みは一般的だ。
するとジュリアーニがウクライナで政治的なライバル調査を行ったという疑惑に関するメディアの話は、結局最初に報道されたものとは少し変わってくるということになる。それはまさに、私の指導者が約30年前に警告したような、微妙な差異のある、複雑なニュースの展開だ。
そして浅はかなメディアの取り組みが全体像を取らえ損ね、米国民にその全体を伝えているのは残念だ。
あたかも、今となっては虚偽であると証明されたロシア=トランプ共謀疑惑の教訓が、一部の記者には全く浸透しなかったとでもいうようだ。そしてそれは米国民にとっての損失だ。愚行が続けられる証拠に、トランプのゼレンスキーへの接触は要するに、次の選挙で外国の干渉力をせがむための取り組みということだと示唆する、20日のヒラリー・クリントンのツイートには多くの注目が集まった。
あのツイートは挑発的なものかもしれないが不当だ。接触したのは前回の選挙――そして前政権で起きたことを解決するためのものだった。
また選挙での外国の干渉について高いモラルの基準を持つ人がいるとしても、クリントンがその先頭に立つことはあり得ない。彼女の選挙陣営弁護士は、トランプに絶対負けて欲しいと思っていた英国の外国人であるクリストファー・スティールを、トランプに関する裏付けのない疑惑をロシア人にせがむために政敵調査計画の一環として雇うようにさせ、それからFBIに行ってトランプに関する捜査をでっち上げた。そして彼女の党の指導部、民主党全国委員会は、ウクライナ大使館にトランプに関するスキャンダルをかき集めるよう求めた。そんな前科を持っていては、この話に先制攻撃などできる立場ではない。
実のところ、ウクライナ疑惑の真相を探ることは全ての人にとって利益になる。バイデンとウクライナが何も不正をしていないのであれば、無罪放免にすべきだ。不正があったのであれば対処すべきだ。
現在の愚かな報道は、我々が得られるべき答えに到達することを妨げている。
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