<引用元:FOXニュース 2019.1.13>
National Review アンドリュー・C・マッカーシー氏による寄稿
11日夜に、ニューヨーク・タイムズが出した記事は、明らかに大スクープとなることを意図したものだった。2017年5月9日のジェームズ・コミーFBI長官の解任後、FBIがトランプ大統領の捜査を正式に開始したという内容だ。だが実のところ、記事が示しているのは、FBIが1年以上の捜査の後に、当初からの事実を公然のものにしたということでしかない。2016年大統領選挙中にオバマ政権――司法省とFBI――が開始した捜査は、ずっとドナルド・トランプについてのものだった。
次のことを思い出す必要がある。FBIはスティール文書を信じた。それは、イギリスの元スパイであるクリストファー・スティールがまとめた、まがい物のインテリジェンス・レポートの寄せ集めだ。スティールは突き詰めればヒラリー・クリントン陣営に雇われていた。司法省が4度にわたり外国情報監視裁判所(FISC)に監視申請を提出した際、FBIは文書の主張を信じると保証した。
表向きは、監視申請はカーター・ページを対象にしていた。だがページは枝葉の問題でしかなかった。文書はおもにトランプについてのものだった――ページではなく、ポール・マナフォートではなく、マイケル・コーエンではなく、スティールが言及した他のトランプ側近でもなかった。文書で中心的に主張しているは、トランプが選挙を自分に有利に傾けるためにロシアとスパイ活動を共謀し、その後ホワイトハウスからプーチンの指示を実行するというものだった。FBIとオバマ司法省は、文書の真実性を立証できなかったが、間違いなく信じていた。
文書を信じるなら、もちろんトランプは捜査のおもな焦点となる。
FBIと司法省は、これが物議を醸すと分かっていた。――現政権が、立証された犯罪の証拠がないままに、対立政党の選挙陣営をスパイしていたのだ。そこで彼らは、トランプに焦点を当てていることは伏せたまま、そうなるように捜査を画策した。トランプが大統領に選ばれる前、彼らは自分たちがトランプ陣営や、ページやパパドポロスのようなその関係者に集中しているように示すファイルを準備した。こうして、トランプがターゲットであると正式に記録することなく、トランプについての証拠収集を試みることができた。
トランプが選ばれた後、FBIは、トランプがやがて政府のインテリジェンスファイルに対するアクセス権限を持つことになると気づいた。次期大統領について訴追できることを期待して、その陣営を捜査してきたと正直に伝えれば、トランプが捜査を打ち切らせ、FBIと司法省の邪魔者を排除するのではないかと憂慮せざるを得なかった。そのため彼らはトランプに、捜査はロシアと陣営内の数人のはみ出し者についてのものであると偽って伝え、彼自身は捜査対象ではないと保証した。
これは事実ではなかった。捜査では最初からずっと、トランプについて何か発見することが期待されていた。例えばそのためにコミー長官は、次期大統領であったトランプにスティール文書について状況説明をした際、モスクワのホテルでの売春婦を含めたみだらな疑惑のみを伝えた。コミーは次期大統領に、文書の主眼がトランプのクレムリンとのスパイ共謀疑惑であることも、FBIが文書に基づいて監視令状を得るためにFISCに行ったことも伝えなかった。FBIは次期大統領に、疑惑はみだらで立証されていないと伝えていたが、まさにその瞬間、彼らは連邦裁判所に対して、裁判官がスパイを認可するために頼る情報としてそれらを提出していた。
その後、コミーはトランプ大統領に、繰り返し大統領が容疑者ではないと伝えたが、国民とメディアにトランプが容疑者だったと信じ込ませるよう、明らかに仕向けた証言を下院で行い、メディアはまさしくその通り報道した。そうすることで、FBI(とコミーの証言を認可した司法省のオバマ留任者)は、捜査の存在を公に確認することと、捜査の対象を公に明らかにすることに関して司法省のルールを破った。つまり、広く報道されたクレムリンによる2016年の選挙運動でのサイバースパイ干渉に、トランプ陣営が「協調」していた疑がいがあるとコミーは公に発表した。
2017年5月9日のコミー解任は、トランプに対する捜査の始まりではなかった。FBIと司法省がうかつにも、ついにトランプに負わせる罪――司法妨害――ができたと判断した瞬間だった。彼らは性急と自信過剰を持って、(a)コミー解任はロシア捜査の妨害を意図したものに違いなく、またこのことを、コミーが解任の数日後にニューヨーク・タイムズにリークした覚書を根拠として――(b)トランプはフリンの捜査を妨害した可能性があるという主張につなげることができると正当化した。
法的にはこの中に司法妨害はない。だがFBIと司法省はこの奇抜で欠陥のある法理論に落ち着いた。たとえ大統領に、部下を解任し、捜査に介入する憲法上の権限があるとしても、大統領の動機が不適切であると検察官が結論付ければ、ともかく司法妨害で起訴できるという法理論だ。もちろん、たとえその可能性があったとしても、トランプは事実、ロシア(それはまだ継続中である)やフリン(その後起訴され有罪を認めた)の捜査に干渉するための措置を全く取らなかった。だがFBIは、長官の解任のために性急になり、実際何カ月も立件しようとしていたトランプに対する容疑を公然のものにするために、この妨害説が十分妥当な根拠であると結論付けた。
忘れてならないのは、単にFBIがトランプについての捜査ファイルを正式に開いたというだけではないということだ。ロッド・ローゼンスタイン司法副長官とアンドリュー・マッケイブFBI副長官の間で、大統領に対する盗聴――つまり、トランプが不利な発言をするのを録音しようと密かな監視を行うことについて話し合いがあった。トランプには職務遂行の能力が著しく不足していると主張して――修正25条を発動することについての話し合いもあった。そしてついに、5月17日にローゼンスタインは、ロバート・モラーをトランプ・ロシア捜査の追求のための特別検察官として任命した。
だがこうした措置の全ては、1年以上も事実であったことがついに公然のものとなったということでしかなかった。つまりFBIは、トランプに対する刑事訴追を行おうとして捜査を実施していたということだ。犯罪を示す確かな証拠がなかったために、FBIは犯罪捜査権限ではなく対諜報権限の下でそれを行った。――2016年選挙のロシアの干渉を捜査するという見せかけのおかげで、司法妨害の捜査を強化したり他の犯罪を探そうとしたりしながら、捜査を継続できると計算してのことだ。
だが間違いなく言えることがある。捜査は常にドナルド・トランプについてのものだった。最初の1日目から。