<引用元:ニューヨーク・ポスト 2018.5.12>マイケル・ウォルシュ氏による論説
トランプ政権は、当初から「大混乱」にあるという非難を浴びてきた。(国務長官が2人目、国家安全保障問題担当補佐官が3人目、首席補佐官が2人目ということも含めて)幹部スタッフの入れ替わりが激しいことから、気が強く時には不作法でもある大統領の個人的な振る舞い、またツイッターでの非ポリティカル・コレクトなやじにいたるまで、ドナルド・トランプは政治的に対立する人々が抱く、効率的なホワイトハウス運営はこうあるべきだ、という従来の概念を認めることを拒否してきた。
それでもなお、経済は好調で、多くの規制は押し戻され、失業率は低下、求人は右肩上がり、税金は削減され黒人の失業率は史上最低となっている。メキシコとの国境のための壁の試作品はテスト中であり、ICE(移民税関捜査局)の強制捜査で危険な違法外国人が一斉検挙され、先月は、数カ国のイスラム教国家に対する「入国禁止」が最高裁で争われて、大統領の移民に対する権限が支持された。
外交問題では、朝鮮半島の2つの国が話し合いを持ち、トランプと北朝鮮の独裁者である金正恩との首脳会談が、6月にシンガポールで行われる予定だ。ISISの「カリフの府」は効果的に破壊され、先週トランプはイラン宗教指導者たちの足元をすくって、オバマ政権が(上院の承認を求めることなく)結んだ核合意をキャンセルした。
要するに、これはFDR(フランクリン・D・ルーズベルト)の第1期以来で最も効果的な政権だったということだ。またそれは、いわゆる「レジスタンス」に逆らって達成されている。それは、公然と敵対するほとんどすべての主要マスコミ、内部の行政職員、民主党、共和党内の反トランプ派、情報機関と捜査機関の反対勢力、そしてロバート・モラーによるロシアとの「共謀」疑惑に対する捜査などのことだ。
かなりの「大混乱」である。
実のところ、大統領の敵はトランプ氏の政策を嫌ってはいても、その人物のほうをもっと嫌っている。ドナルド・トランプは個人的に、感情をあらわにしてエスタブリッシュメントを怒らせている。トランプに反対する人たちは、アドレー・スティーブンソンをあがめ、アイク(アイゼンハワー)のことを何とか第二次世界大戦に勝った間抜けに過ぎないと考えたのと同じ人たちだ。ジョン・F・ケネディを崇拝し(だがLBJには嫌悪感を抱いた)、ニクソンを嫌い、レーガンのことを感じの良い劣等生だと考え、オバマを神殿に祭り上げた。彼らはアイビーリーグ出身で、学歴偏重主義者であり、大統領の職務を遂行するための唯一の正しいやり方だとされるジョージタウン大学出身のエスタブリッシュメントであり、それがハーバード・民主党・集団思考のやり方だ。
ところが、トランプが理解しているのは、多くの偉大な指導者が理解していたことだ。つまり、意見の一致ではなく「大混乱」が、意見を試しテストする方法であるということだ。誰かが、また何かがうまく行かなければ、廃止して別の事を試してみるということだ。重要なのは結果であって、一貫性ではない。トランプが、武力で威嚇する狂人から、魅力を振りまいて大げさに歓待する人物に変貌できるのを見て、彼らは激怒する。それをインチキだと捉えるからだ。
それがどうしたというのか?だからと言って効果がないということにはならない。フランスのエマニュエル・マクロンに聞いてみてはどうか。マクロンはトランプとは似ても似つかないが、それでも興味深いことに、主人のそばを離れない子犬のように、厚かましい米国のボスとの間に親密な関係を築いている。フランスがイラン合意から身を引き始めるのを注意深く見守ろう。
その上、イエスマンとごますりの「艦隊」がいると、最高指導者が予期しない重大な結果から隔絶されてしまう。JFKの最高で最も優秀な人々が、この国をベトナムの泥沼にはまり込ませてしまった。ニクソンの取り巻きは、手遅れになるまでウォーターゲートの政治的重大性を大統領から隠した。オバマは自らの道徳的正しさについて自信過剰であったため、憲法上の微妙な点をほとんど気にかけなかった。
最後に、トランプが非常に予測不可能であることは、単にワシントンDCの坊主と心配性の人たちを怯えさせるだけでなく、反対者たちも恐れさせている。北朝鮮のキムの真意が測りかねない一方で、もう日本上空を超えてミサイルを撃ってはいない。サウジは、米国の強い馬に従って、イラン政権に対する反感を明確にし、イラン政府が核開発を公然と再開するなら、独自の核を獲得することも辞さないと警告している。2009年と2017年には、イランの反抗的な若者たちによる国内暴動を生き延びたものの、イスラム教の長老たちに3度目の幸運は望めそうにないだろう。
確かに、秋の選挙は大きな試練となるだろうが、トランプはすでに内部の棘を排除している。ポール・ライアン下院議長と、上院のうるさい批判者のボブ・コーカーとジェフ・フレークは引退を表明した。共和党が下院にしがみつけば、トランプに好意的な議長が立法議案を前進させるだろう。
大きな地政学的な試練は、蘇る中国となるだろう。終生の絶対的指導者である習近平は、衰退するロシアのウラジミール・プーチンよりも、はるかに手ごわい敵であることが分かるだろう。トランプが習に対してアメとムチによる対処を再開するのを期待しよう。花とチョコレートだったのが、突然南シナ海に小型砲艦なのだから。トリックとしては、中国に推測させ続けて、それから平和を守るために警告を再開することだ。
それが大混乱であるなら、もっと増やそうではないか。
著者、マイケル・ウォルシュ氏について:PJメディア並びにAmerican Greatnessの寄稿者。