<引用元:ウォールストリート・ジャーナル 2018.7.19>WSJ紙論説委員 キンバリー・A・ストラッセル(Kimberley A. Strassel)氏による論説
オバマ政権CIA長官がFBIのトランプ・ロシア捜査をけしかけたと認める
トランプ・ロシア専門の探偵たちがまたニュースに出るようになり、彼らが党派的ではないという主張を再び米国人が疑う結果となっている。先週、現在も自ら「最低で」「むかつく」と言い表している大統領に対して、全く偏見を抱いていなかったと議会に証言したのは、連邦捜査局のピーター・ストラック捜査官だった。今週、11月の選挙で民主党に投票すべき義務について米国人にツイッターで説教したのはジム・コミーFBI元長官だった。
だが遅ればせながら少し精査されるべき男は、中央情報局元長官のジョン・ブレナンだ。ブレナン氏はトランプ大統領を「金銭ずく」「不道徳」「政治腐敗」と非難し、FBIに対する共和党の捜査を激しく非難していた。今週同氏はツイッターで、トランプ氏のヘルシンキでの会談は「(国家に対する)反逆的なものに他ならない」と主張した。これはオバマ派の人物だとしてもラフプレーだ。
それこそがブレナン氏という人物――党派的人物――であり、それゆえに2016年のスキャンダルで彼が果たした役割に対する懸念の方がFBIの物よりも大きい。コミー氏はルールを無視し、指揮系統を乱し、捜査の権限を乱用した事で非難を受ける立場である。それでもFBIのトランプ捜査は、党派的な策略というよりも傲慢と自信過剰が作用したものである可能性がはるかに高い。ブレナン氏の場合はそれは全く当てはまらない。彼はCIA長官に任命される前、オバマ氏の緊密なアドバイザーを務めていた。また記録によって明らかであるのは、ブレナン氏がヒラリー・クリントン陣営を支援するために(また自分の地位を守るために)、世界で最も強力なスパイ機関の責任者という自分の地位を利用し続けたという点だ。
ブレナン氏はトランプの捜査に着手した事を自分の手柄にしていた。2017年5月の下院情報委員会聴聞会で、彼は「ロシア高官と米国人の間の接触に関するインテリジェンスと情報に気づく」ようになったと説明した。CIAは米国市民を捜査できないが、ブレナン氏は「あらゆる情報とインテリジェンス」が「捜査局(FBI)と共有された」ことを認めた。彼はこの情報が「FBIの捜査の根拠としての役割を果たした」と述べた。私の情報源が示唆しているのは、ブレナン氏は自身の当初の役割を誇張していたが、いずれにしても本人の証言により、オバマ=クリントン派である同氏はFBIに情報を押しつけて、行動を起こすよう圧力をかけていたという事だ。
もっと注目すべき事として、ブレナン氏はそれから、ロシアが特にトランプ氏に有利になるように選挙に干渉していたという話に方向付ける主導者となった。その結果すぐにトランプの共謀疑惑へと発展することになったのだ。クリントン陣営は特に民主党全国委員会のサーバーへのハッキングを考慮して、そう主張したがっていた。数多くの報告から、ブレナン氏が内部で積極的に同じ方向へ推し進めていた事が明らかになっている。そこで問題なのが、2016年7月の時点では当時のジェームズ・クラッパー国家情報長官でさえその話を受け入れなかったという点だ。クラッパー氏は公にハッキングが誰のせいであるか述べることや、動機を結び付けることを拒んだ。またブレナン氏はFBIに自らの見方を認めさせることもできなかった。FBIは、ロシアのサイバー攻撃は米国の政治システムを広く混乱させる事を目的としており、トランプ氏を助けるためではなかったという考えを維持した。
CIA長官自身、クリントンの偏った解釈を公表することはできなかった。インテリジェンス・コミュニティの支持が得られず、米国の政治に干渉していると見られないように注意する必要があった。それでどうしたか?彼はハリー・リードに連絡した。8月の終わりにブレナン氏は上院少数党院内総務であったリード氏に、ロシアはトランプ氏が選挙で勝てるように支援しようとしており、トランプ氏のアドバイザーがロシアと共謀している可能性があると伝えた。(2年後になっても、そのような主張を裏付ける証拠は出ていない)
だが真相はどうでもよかったのだ。説明から数日以内の絶好のタイミングで、リード氏がコミー氏に手紙を出すと、当然ながらそれが直ちに公になった。「ロシア政府とドナルド・トランプの大統領選挙陣営の直接のつながりを示す証拠が、高まり続けている」リード氏はそう書いて、クリントン陣営の「ロシアによるトランプ支援説」を浮かび上がらせた。リード氏は悪名高いスティール文書にある疑惑の少なくとも1つを暴露し、FBIが「ありったけの手を尽くしてこの問題の捜査を行っている」と主張した。
リード氏の手紙は、ブレナン=クリントン共謀による話を初めて公式に暴露する一撃となった。クリントンの政敵調査会社であったフュージョンGPSはそれに続いて、FBIに投下した文書についてマスコミの協力者に説明を行った。9月23日にヤフーニュースのマイケル・イシコフは、「U.S. intel officials probe ties between Trump adviser and Kremlin(米情報機関当局がトランプアドバイザーとロシア政府のつながりを調査)」という見出しで記事を出した。ほら出来上がり。共謀の話だけでなく、FBIが捜査中であるという証拠も公表されたのだ。
イシコフ氏とデイビッド・コーン氏は、最近出た「Russian Roulette(ロシアンルーレット)」という著書の中でこう言っている。リード氏ですらブレナン氏の説明には「隠された動機」があったと考えていたし、「CIA長官は、トランプ陣営とつながりがあった可能性についての情報を含めて、国民がロシアの工作について知る必要があると考えていたと結論付けていた」。(ブレナン氏の支持者は、彼の目的が不利な情報をリークすることであった事を否定している。)
コミー氏は10月の終わりに、FBIは候補者への捜査を再開すると発表した。クリントン支持者はそれをもっともらしい言い訳にしている。だがトランプ支持者は共謀疑惑の暴露とFBI捜査が自分たちの候補者に損害を与えたと主張している。その暴露の中心にあったのは政治だった。そしてブレナン氏が舞台監督だった。彼がまた「反逆罪」というツイートをした時それを思い出して欲しい。