海兵隊大将として輝かしい経歴を持つジム(ジェームズ)・マティス国防長官。メディアへの露出がほとんどなく、目立たない印象さえ覚えるマティス長官について、ワシントンエグザミナーの1月9日の記事でその一端を垣間見ることができるかもしれない。
マティス長官はトランプ大統領をうっかり怒らせることのないように、慎重に目立たないように振る舞っているのかという記者の質問に対して、あるペンタゴン幹部は肯定しつつも、それには長官の性格的なものが起因しているのだと答えている。
長官はお膳立てされた記者会見のようなものを好まず、注目の的になることも望まず、舞台の背後で人知れず活動することを好む。
実際、テレビカメラの前での本格的な記者会見は2回しか行っておらず、昨年5月に行ったものが最後だ。
半面、ペンタゴンの通路で記者団と自由な形でやり取りするのを好むのだという。その場合はカメラ抜きの録音のみとなる。それはこれまでの国防長官では(記者の記憶では)なかったことだという。
昨年8月には、北朝鮮との対話に関するトランプ大統領のツイートをめぐって、意見の対立があるのではないかとマスコミに取り沙汰された。マティス長官は「大きく誤って解釈された」と述べ、「私が6と言ったのを大統領が半ダースと言えば、私と大統領の意見が食い違っているのだと彼ら(マスコミ)は言うのだ」と笑顔を浮かべながら嘆いた。
トランプ大統領からは「大将」と呼ばれることが多く、好感を持たれているようだ。
この記事のタイトルともなっているマティス氏の「見えざる手」とは一体何のことかと言えば、その1つの例としてアフガニスタンに対する方針を変更させた点を挙げている。
トランプ大統領は、昨年8月にアフガニスタンの政策を発表した際、「元々の自分の直感」では兵士を引き上げるつもりだったが、何カ月も会議を重ねた結果、もっと積極的な戦略で戦闘を一変させるというマティス長官の考えに納得したのだった。
また最近起きた出来事として、パキスタンについての一件を挙げている。トランプ大統領は新年になってパキスタンを非難するツイートを投稿し、テロリストを支援していると訴えて、同国へのアメリカからの対外援助の打ち切りをちらつかせた。
一方マティス長官は、先月パキスタンを訪問していたのだが、挑発的な発言は一切行わずパキスタンに善処を促すと認めることも拒んでいた。
長官は「私はそのようなやり方で問題に対処することはない」と同行した記者に話した。「一緒に取り組み、その意思があれば一致点を見出す。それからどのようにして、共同で取り組むことのできる問題に対処できるかについて取り掛かるつもりだ」
しかし、ペンタゴンの情報筋によると、パキスタンの軍幹部との個別の会議の場では、パキスタンがハッカーニ・ネットワークというテロ組織を支援しているという証拠であふれたファイルを取り出して、変革を要求していたのだという。
ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン氏は、マティス長官を「戦略的思考を持った冷静沈着な人物」と見なしている。ワシントンでの相変わらずの政治的駆け引きに加わったり、トランプ氏のツイートにいちいち反応したりすることなく、「大きな政策の問題や決定について集中している」というのだ。
最後にマティス長官の長年の友人の言葉を記事から引用する。
「彼は自分が国のために、またとりわけ軍隊の人々のために仕えていると思っている。彼が仕事を追及することはなかった。未知の海で船のかじを取ることに最善を尽くしているのだ」と匿名を希望する旧来の友人は述べた。
トランプ氏との関係についてはこう述べている。「彼は憲法を尊重している。トランプは合法的に大統領となっている。マティスは憲法を守るために自分の職務を果たしてきた」
それではトランプ政権の国防長官としての期間が終わったら、暴露本を書くだろうか?
「まずそれはないだろう。それは彼のやり方ではない」と友人は答えた。