<引用元:ニューヨーク・ポスト 2021.8.19>カッシュ・パテル氏による論説
ジョー・バイデン大統領は、アフガニスタンの衝撃的な結末をトランプ政権から「受け継いだ」状況のせいにしようとしている。全く間抜けな責任転嫁の試みだ。チーム・トランプの撤退計画は理にかなっていた。破局を生んだのはその計画に対するバイデンの変更だった。
私はドナルド・トランプ前大統領のアフガニスタン戦略を熟知している。2020年11月に、私は国防総省の首席補佐官に任命されたが、私の主要な責任の1つはアフガニスタンでの長い戦争を徐々に終わらせることだった。
トランプは、条件に基づく秩序だった出口計画を用意して国益を守るよう私に指示した。計画は最終的に実に単純なものとなった。つまり、アフガン政府とタリバン双方は、アフガニスタンの米国人や米国の利益を損なうようなことを引き起こせば、米軍が全力で反撃すると伝えられていた。
次に、双方は暫定的な共同政府を作るために交渉し、両者はアルカイダへの関与を断固拒否しなければならなかった。最後に、小規模の特殊作戦部隊が、テロリストの脅威が発生した場合に直接的な行動を取るため国に駐屯する。こうした条件が全てそろった時―他の連鎖する条件と共に―撤退の開始が可能であり、実際そうだった。
我々は2021年1月20日までこの計画の実行に成功していた。この合間に―アフガニスタンで米国の死傷者がなかった時―アシュラフ・ガニ大統領とタリバンは、一連の交渉を重ねており、アルカイダは脇に追いやられていた。その結果、アフガニスタンの米軍を2,500人に減少させることに成功し、テロとの戦いが始まってから最低の数字となった。
我々は長期の移行中に次期バイデン政権に全計画を引き渡した。新政権は全く関心を持たなかった。
新最高司令官が、トランプ政権の計画を4カ月延期して米軍は2021年9月11日までにアフガニスタンを去ると宣言した時、全ては変わった。極めて重要なことは、バイデンが継続して取り決められた規定を厳守して撤退を条件づけなかった、ということだ。全くの象徴に基づく気まぐれな日程で無条件に撤退するものだった―そして変更不能となった。
その時点で、タリバンは近づく日程をのんびり待ち、それから全国的な侵攻に着手した。この政権からの実力行使を全く恐れる理由はないと知っていたからだ。今も続く大混乱―特に米国人と協力者の足止め―は、バイデン政権が条件に基づく計画を控えると決定したことによる当然の結果だ。
変更不能の撤退日程を設定し、チーム・バイデンは現場レベルのインテリジェンス報告を全く尊重しなかった。大部分が重要ではないと解釈されたのだ。今週、バイデンの国家安全保障担当補佐官であるジェイク・サリバンは、アフガニスタンの安全状況は「予測外の速度で展開した」と主張した。
それが、米国で最上級の国家安全保障当局者の1人から出た衝撃的な声明だ。条件や義務から解放された場合に、タリバンは米国の軍事力不在の中で国全体を制圧する恐れがあるし、そうなるだろうということに、誰もほんの少しも驚かなかったはずだ。
悲惨なことに、バイデン政権が撤退日だけを念頭に置いたために、実務的なインテリジェンスは希望的観測と虚偽の約束に取って代わられた。4月に、アントニー・ブリンケン国務長官は、「責任を持って、慎重に、安全に軍を撤退する・・・アフガニスタン政府とタリバンの間で永続的で公正な政治的解決を進める」と約束した。
それは全く実現しなかった。先月ブリンケンは、バイデンの撤退計画でカブールの米国大使館が危険にさらされることはないと我々に断言したが、現在大使館は避難している。まだバイデン自身も先月、タリバンがアフガニスタンを制圧することは「ほとんどありえない」と断言していたが、今や目にもとまらぬ速さでそれが起こっている。
こうした安っぽい政治的なレトリック、現場レベルの治安情勢の無視、そして条件に基づく計画の欠如の中、アフガニスタンは陥落した。米国と世界は、高い地位に就く人々からもっとましな結果を得て然るべきだ。我々は政権の完全な崩壊を目の当たりにしている―それはアフガニスタンだけのことではない。
<カッシュ・パテルは、トランプ政権で国防総省の首席補佐官とテロ対策大統領補佐官代理を務めた。>