<引用元:ニューヨーク・ポスト 2020.10.21>ケリー・クラフト国連大使による論説
国連が世界の最も大きな課題の多くに取り組む中、国連の完全性と有効性にとっての最大の脅威は内部からの―中国からのものだ。長年タートルベイにやってくる北京の代表団は、共産主義政府自体の目標に沿うように国連をねじ曲げようとしてきた。トランプ政権は押し返しつつある。
それは巨大な任務だ。1つには、我々が最初に問題を認識しているためだ。だがそれは解決に向けた最初のステップでもある。
米国の国連大使として私は、中国共産党がその不品行をごまかし、批判を封じ込め、独裁政権を拡大させるために、ますます積極的に国連機関を巧みに操ろうと取り組むのを直接目にしてきた。
中国は、安全保障理事会の常任理事国としての立場を利用して、シリア、ベネズエラ、そしてイランの独裁政権を保護してきた。北京の外交官は、債務国と仲間の独裁政権に圧力を掛けて、腐敗した人権理事会と政治色の強い国連総会第3委員会の声明をでっち上げさせて、香港と新疆ウイグルでの中国の圧制的な行為を称賛させた。中国共産党員は、北京の利益を拡大するために中国人以外の国連指導者―その最たるものが、世界保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長だ―にも圧力を掛けてきた。
中国人は、職員は自国の利益ためというよりも、国際的な公務員として行動するという国連の必要条件をいつも破っている。例えば国際民間航空機関の柳芳(Fang Liu)事務局長は、自分の立場を利用して、機関のコンピューターに対する中国の支援によるハッキングを隠ぺいし、台湾が民間航空問題に参加するのを阻止した。国際電気通信連合の趙厚麟(Houlin Zhao)事務局長は、自分の立場を利用して共産主義監視国家配下のファーウェイの販売を促進した。
前政権と異なり、トランプ政権はこうした脅威に関して明敏である。我々は、北京の世界に対する真の意図を暴露し、全面的に反撃している。国連の制度の中で、我々は同盟国が我々に参加するよう説得するために懸命に努力してきたが、結果が見え始めている。
今年3月に、我々は知的財産権を尊重する国であるシンガポールの候補者が、世界知的所有権機関の事務局長の座をめぐって中国の候補者に勝てるようにするために同盟国と協力した。5月には安全保障理事会で、香港に対する北京の残酷ないじめにスポットライトを浴びせた。
6月に我々は、UN75政治宣言から、いわゆる「習近平思想」という言葉を削除するための同盟国との取り組みを主導した。国連文書における中国共産党のイデオロギーに関する言及に対して、国連加盟国がますます反対を示す中、昨年、年に1回の2つの国連総会決議案に対して異議を唱えたのは我々だけだったが、今年30の同盟国が加わった。
9月16日、私はニューヨークの台北経済文化代表処の責任者と1対1で会談したが、台湾の高官と米国国連大使の間でそうした会談が行われたのは初のことだった。ハイレベル週間の中で、我々はトップ10の人道主義的な寄与者とのイベントを主催した。その中には中国は含まれず、米国人の寛大さが示され、多国間のリーダーシップという中国の主張は退けられた。
また米国は、新疆ウイグル自治区のウイグル人、カザフ人、そして他の少数派グループに対するひどい人権侵害を先頭に立って暴露し続けている。問題に関する複数の米国主導のイベントと声明を踏まえて、今月我々は、ドイツとイギリスの仲間を支援し、新疆ウイグル自治区、香港、チベットに関する第3委員会の共同声明に39の共同提案者を確保した―昨年より16の共同提案者が増加したのだ。
これらは、多国間協調から後退する政権の行動ではない。むしろ、政権は人権、民主主義の原則、そして法の支配を踏まえた多国間体制を回復し守るために必要な仕事を懸命に行っている。修復が不可能な特定の国際機関とは手を切り、一時的に迷走している機関は大きく作り直す必要があるかもしれないだろう。我々は多国間協調を求めている―だが、多国間協調は、独裁主義の支配を促進するものなら無用だ。
これは米国と中国との戦いではなく、人々のために尽くす多国間体制と独裁者を保護する多国間体制との間の戦いだ。世界の自由を愛する国のためだけでなく、独裁政権や虐待を行う政権の下で苦しむ人々のために、トランプ大統領、マイク・ポンペオ国務長官、そして私は、自由を支持して日々戦い続けるつもりだ。
ケリー・クラフトは米国国連大使である。