<引用元:リアルクリアインベスティゲーションズ 2020.9.24>ポール・スペリー
ジョン・ブレナン元CIA長官は、2016年大統領選挙でのロシアの干渉に関するインテリジェンス報告書の非常に重要な部分を自ら編集し、ロシアのウラジミール・プーチンはドナルド・トランプが大統領の座を確保できるように助けるために2016年大統領選に干渉した、とするブレナンの見解に専門の分析官が異議を唱えた後、政治的盟友を報告書作成を主導する役割に任命したという。報告書の草案作成でブレナンの果たした役割を詳しく説明した機密文書を閲覧した2人の米国情報機関高官による話だ。
ブレナンが報告書に盛り込んだ驚くべき結論は、トランプ・ロシア「共謀」捜査の継続を正当化するのを助けるために使用さた。FBIが2016年に着手した捜査だ。選挙後、ロバート・モラー特別検察官が捜査を引き継いだが、結局のところトランプやその陣営がモスクワと共謀したという証拠を全く発見できなかった。
オバマ政権は、報告書の機密解除版―「最近の選挙におけるロシアの活動と意図に関するインテリジェンス・コミュニティ評価(ICA)」として知られる―を、トランプが就任するわずか2週間前に公開し、トランプの大統領としての立場に疑念を投げかけた。民主党と全国メディアは、報告書を引き合いにしてロシアが2016年の結果に影響を与えたと示唆し、プーチンはトランプ再選のために再び干渉する可能性があると警告した。
ICAは、ジョン・ダーラム米国連邦検事による「共謀」捜査の発端に対する継続中の捜査での中核となっている。ダーラムは、情報機関の調査結果が政治的な目的で絞り出されたのかどうかを知りたいと考えている。
本紙リアルクリアインベスティゲーションズは、ブレナンがICAの起草をまとめるのを助けたCIA職員の1人であるアンドレア・ケンドール・テーラーが、ヒラリー・クリントンを選挙中に経済的に支援し、エリック・チャラメラに近い同僚であることを把握している。チャメラは、結局は1月に上院で無罪放免となったものの、トランプの弾劾に結びついた告発を行った国家安全保障に関わる民主党の「内部告発者」という認定を昨年本紙から受けた人物だ。
2人の高官は、選挙中に公然とクリントンを支持していたブレナンが、プーチンはクリントンが選挙に勝利することを期待しており、トランプを「不確定要素」と見なしていると主張した一部の情報分析官の反論にもかかわらず、報告書からプーチンの真意に関する相反する証拠を除外したと述べた。
異議を唱えた分析官は、モスクワがクリントンを好んだのは、トランプは余りにも予測不可能だという懸念があったのに対して、クリントンなら自分たちの指導者に協力すると判断していたからだと結論付けていた。国務長官としてクリントンは、より前向きで協力的な段階に移行すべくモスクワとの関係を「リセット」しようと試みたが、トランプは選挙運動で米軍の拡大を掲げており、モスクワは脅威に感じていた。
この分析官たちはまた、クレムリンは概して、2016年の選挙期間中に対立を生じさせて米国の民主主義プロセスを混乱させようとしていたと主張していた。彼らはまた、ロシアはトランプが選挙に出馬する何年も前、2008年と2012年の選挙でも干渉しようとしていたと指摘した。
「ブレナンは(プーチンがトランプを支持したという)論題を採用し、背後の実態を何もつかんでいないとしながらも異論となるデータを無視して結論の重大性を誇張することに決めた、と彼らは不満を述べた」と、評価報告の背景にあるスパイ技術に対する2018年の検証に参加した米国情報機関高官は語った。2016年大統領選後にその評価報告を命じたのはオバマ大統領だった。
高官が詳細に説明した話では、分析官らは、プーチンがトランプを選挙で勝たせるためにクリントン陣営に対抗する「積極的対策」を直接命じたというブレナンの判断を、基礎となるインテリジェンスは「薄弱」だったのに、自分達も支持するよう政治的圧力を受けていたと述べたという。
(中略)
CIAの「ロシア・ハウス」からの情報提供なし
ケンドール・テーラーの正体を確認した高官は、ブレンはプーチンがトランプに有利に働くように選挙に干渉したと結論付ける以前に、CIAの通称「ロシア・ハウス」、公式にはヨーロッパ・ユーラシア・センターと呼ばれるラングレー内の部署の専門家に情報提供を求めなかったと述べた。
「あれはインテリジェンス評価報告ではなかった。(インテリジェンス)コミュニティでも、ロシア・ハウスの専門家とすらも協力したものでなかった。ブレナン自身が選び、働きかけた少数のグループでしかなかった・・・それにブレナンは編集も行った」と高官は語った。
高官は、国家安全保障局(NSA)の分析官も、プーチンが直接トランプ側に有利に偏って行動したという結論に異議を唱えたと指摘した。17の情報機関のうちICAに参加するよう招かれたわずか3つの機関の1つであるNSAは、特にあの衝撃的な結論に関して、CIAとFBIより信頼の度合いを低くしていた。
NSAがずれていたのが意義深い理由は、同機関が海外でのロシア高官の通信を監視しているためだと高官は述べた。にもかかわらず、NSAはそうした通信傍受によるインテリジェンスによってブレナンが推奨する結論を裏付けることはできなかった。マイケル・ロジャーズ元NSA長官は、プーチンとトランプに関する結論には「同レベルの情報源と同レベルの複数情報源がなかった」と証言しており、報道によるとダーラムの捜査に協力しているという。
2人目の情報機関高官は、まだ機密扱いである下院情報委員会の審査の草案を読んだというが、専門のインテリジェンス分析官があのICAはブレナンが入念に管理・操作したものだと不平を漏らしていたことを認めた。ブレナンは以前オバマのホワイトハウスで働いていた。
広くメディアで報じられてきたように、「評価報告を書いたのは17の機関はなく、3機関の十数名の分析官でもなかった」と彼は語った。「それを書いたのはCIAのわずか5名の職員であり、ブレナンが5人全員を厳選した。そして執筆者のリーダーはブレナンの親友だった」
ブレナンがICA草案作成のプロセスを厳格に管理していたことは、評価が「インテリジェンス・コミュニティ全体の一致した意見」を反映していたという周知の主張と矛盾するものだ。
ブレナンは自己を弁護して、「インテリジェンス・コミュニティの結論に異議を唱える理由は見つからなかった」とする、上院情報委員会の最近の報告を指摘した。
「ロシアがクリントン元長官を貶め、ドナルド・トランプ候補を助けるために2016年大統領選に干渉したというICAの結論は正しかった」とマーク・ワーナー副委員長(民主、バージニア)は主張した。
「極秘のICAと発見されている基本的なインテリジェンスを我々が検証した結果、これと他の結論は十分に信頼できることが分かった。ロシアが2016年に成功したことで、2020年にも再度実行しようとすることを疑う理由は見つからず、我々は不意を突かれてはならない」とワーナーは続けて述べた。
ところがその報告では、「プーチンは米国選挙に影響を与えるためのキャンペーンを命令」と題する部分も含めて、ブレナンが追加した結論を裏付ける基本的な証拠に対する検証が完全に抹消されている。それでも、結論は「さまざまな実証」と「さまざまな信頼水準」を持つインテリジェンスによって裏付けられている、と別の場所で示唆している。また「特定の情報源の使用に関する懸念」も指摘している。
疑問を増し加えることとして、委員会は元オバマ政権国土安全保障補佐官のリサ・モナコの非公開の証言に大きく依存していた。選挙の前後、ホワイトハウスでブレナンとブレナンの「連合チーム」と面談していたブレナンの親密な仲間だ。ICAでモナコが果たした役割の度合いは不明だ。
ブレナンは先週、ロシア「共謀」捜査の発端を調査する他の2つの上院委員会に協力することを約束した。上院の司法委員会と政府問題委員会は最近、ブレナンと他の証人を召喚する権限を獲得した。
複数の共和党連邦議員と元トランプ政権高官は、ICAに関する機密の下院職員報告の機密解除と公開を強く求めている。
「強烈なものだ」と元CIA分析官のフレッド・フライツは語った。フライツは当時のジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官の首席補佐官を務めていた際に職員報告書を審査していた。
「人々が知らないことがそこにはある。ロシアの選挙干渉に対する我々の理解を根本から変えるだろう」と彼は本紙に語った。
ことろがICA審査に携わった情報機関高官によると、ブレナンはプーチンに関する自身の主要な判断の情報源を公開することはほとんど不可能だと保証したという。ブレナンは、全ての情報源と基本的なインテリジェンスへの参照を非常に高い機密度で区画された壁の中に隠したのだと彼は述べた。
ブレナンとクラッパーはICAに2種類の機密レベルの版を作成したのだと彼は説明した。情報源を明かした非常に制限の高い極秘版・機密の区分化された情報版と、情報源に関する詳細を除外したより利用しやすい極秘版だ。
区分化された調査結果の機密が格下げされない限り、ブレナンの疑わしい情報源に対するアクセスは非常に制限され、基本的な証拠は都合よく曖昧なままになる、と高官は述べた。