<引用元:ザ・ヒル 2019.9.6>リズ・ピーク氏による寄稿
反トランプ派は同意する。大統領の中国との貿易戦争は経済、特に米国の農家に損害を与えているということに。我々が聞かされているのは、関税が中国に対する米国の農産物の輸出に破綻を引き起こし、結果として中部地域に悲嘆をもたらしたという話だ。
それは正しくない。
トランプホワイトハウスに対して向けられるほとんどの批判と同様に、この繰り返される話はかなり誇張されている。CNBCが最近「農家にとって悲惨な年」と表現したような苦しい状況とはかけ離れて、米国の農家は全体としては好調だ。
農務省は、今年の最終的な農家の所得は約5パーセント上昇して880億ドルになると最近予測を出した。その成長率は2017年と2018年のいずれの成長率も越えており、参考までにいうと、経済全体の成長率よりも速いペースだ。
確かにもっといい時代になる可能性もあった。今年の予測は、2013年の1,365億ドルというピークを36パーセント下回るということであり、2000年から18年までの平均(901億ドル)をわずかに下回ることを意味する。農家はオバマ時代に総収入が大きく低下し、2013年の4,840億ドルから2016年には4,120億ドルに激減した。奇妙なことにメディアがそれに大きく注目した記憶がないのだが。
今年、全ての農家の所得が増加するわけではない。農産品の収益は24億ドル、つまり1パーセント未満減少して3,710億ドルとなると予測されているが、畜産と畜産物はやや増えるとされている。
そしてあの恐ろしい大豆の急減は?農務省は全農作物の収益は、大豆売り上げが妨げられたために、30億ドル、つまり2パーセント以下低下すると推定している。だが他の補助金に加えて政権の市場促進プログラムの下で、農家に対する報酬は今年約60億ドル増加し、農作物収益の低下を相殺しても余る。
おそらく最も驚くことだろうが、農務省は今年の平均的農家は11パーセント以上現金収入が増加すると予想しており、そうなれば「4年連続の減少後で初めての年次増加」だ。その上農家世帯の平均収入は今年、約4パーセント増加する。
同時に農家はますます豊かになっている。農業分野の純資産は今年わずかに上昇して270億ドルになりそうだが、その理由のほとんどは不動産価値の上昇のためだ。
つまり、全体的には農家は順調であるか、それ以上の場合もあるということだ。
こうしたことにもかかわらず、リベラルメディアは大農業地帯の惨状を過度に騒ぎ立てることをやめようとしない。ある業界紙が最近飾り立てた見出しは「米農務省、米トウモロコシ、大豆の中国への輸出予測を大幅に減らす」だった。確かに農務省はそう予測したが、そのほとんどはトウモロコシと大豆の出荷減少によるものであり、農産物の全輸出は今年6パーセント減少して「2016年以来で最低レベル」となる。
それは悪い前兆のようであり、貿易戦争のおかげで、ブラジルが中国の大豆の需要に供給しようと飛び込んできているという意見を補強しているように思える。だが話はそう単純ではない。ブラジルから中国への大豆の輸出も、偶然にも落ち込んでおり、8月には40パーセント低下し、今年の最初の8か月間で14パーセント下がっている。
理由?恐ろしい豚コレラのせいで、6月までに中国の主要な大豆消費者である豚の約22パーセントが死んだ。専門家の中には中国の豚の半数が死ぬと予測している者もいる。豚が減れば大豆の需要も減る。
実際の話中国への大豆輸出が減っても、豚インフルエンザ(訳注:原文 swine fluだが豚コレラの間違い?)のために豚の輸出は増加している。全体として、米農務省は米国の農産物輸出は今年度わずかに増加すると予想している。
では米国の農家はこうした市場での不満や関税にどのように反応しているのだろうか?メディアは我々に、貿易戦争が農業地域でのトランプ大統領への支持を妨害しており、再選を危機に陥れていると信じさせようとするだろう。
ヒルは最近、ネブラスカ農業組合のジョン・ハンセン会長の話を引用し、そうした考えを膨らませる記事を出した。記事ではその話として、中国との貿易戦争をエスカレートさせていることについて、「大きな凡ミス」だと呼び、「トランプ大統領を非難した」としている。
記事ではネブラスカ農業組合が、農業州の民主党に独占的に献金し、グリーンエネルギーと連邦政府による農産物の価格維持に傾倒する左翼団体である、全国農業組合の支部であることに触れなかった。大規模な企業農業とトランプ大統領に反対している団体だ。
現実に、確かに中国との貿易対立は農業コミュニティに損害を与えている。だがそのグループの中には、大統領への支持を継続し、大統領が中国政府の貿易慣行と知的財産の窃盗を抑制しようと目指すことが、短期的な痛みを受けるだけの値打ちのあることだと確信している人も多い。
リベラル報道が懸念を引き起こしているのは、農家の経済だけの事ではない。メディアは消費者が自信を失い、結果として成長が低迷することを願って、可能な限り最悪の経済状況を示そうと最大限に努めている。彼らはトランプ再選のための最も説得力ある議論が、雇用市場の過熱と収入増だということを知っているのだ。
しかし、2016年に全国の農家・牧場の62パーセントがトランプに投票して、いくつかの重要な州でその方向に動かしたということを考慮すれば、農家は特に重要なターゲットだ。
民主党議員が、農業輸出を損なっていると言ってトランプを非難しながら、カナダへの米乳製品の輸出を増加させる可能性のある、NAFTA協定修正版のUSMCAの決定を断固として遅らせているのは皮肉なことだ。利益を受ける可能性があるのは誰か?とりわけウィスコンシン州の酪農家だ。
ウィスコンシンは一部の政治専門家から、最大のスウィングステート(接戦州)だとされており、トランプ大統領が再選を果たせるかを決定する可能性があるので、民主党がUSMCAを妨害するのも衝撃的なことではない。
結局のところ民主党は、農家のことはあまり気にかけていないようだ。
リズ・ピークはウォールストリートのメジャーブラケット投資会社、Wertheim & Companyの元パートナー。