<引用元:ニューヨーク・ポスト 2019.8.26>ベッツィー・マッコーイ氏による寄稿
トランプ大統領は、23日に突然中国との経済戦争をエスカレートさせたことで各方面から非難を浴びた。だが街角で簡単に手に入る中国製薬物のフェンタニルで家族や友人を失った米国人にとって、トランプの手厳しい方向転換は正しい動きだ。
大統領は中国製品に対する関税を引き上げ、習主席を「敵」とみなし、中国で製造する米国企業に撤退するよう忠告した。ウォールストリートが沈滞し、党派に偏った人たちはトランプを「気が動転している」と呼んだ。
26日までには、中国政府からの友好的な申し出に反応してトランプは論調を変えた。だが現実には厳しい言葉と経済的脅しが必要とされている。中国はここ数年、巷に毒を氾濫させて米国人に対して麻薬戦争を仕掛けてきた。
過去3年だけでも、中国の工場で製造されたフェンタニルおよび同様の合成オピオイドは約79,000人の米国人の命を奪った。それはベトナム、アフガニスタン、そしてイラクで殺された米国人戦闘員の合計を越えている。またそうした戦闘員と同じように、フェンタニルの犠牲者の大部分は若者だ。
疾病対策センターによると、中国製の麻薬は2013年に巷に現れ始めた。毎年の過剰摂取による死亡は急増したが、オバマ政権は致命的な攻撃を止めるために中国に立ち向かうことはなかった。
トランプは反撃している。兵士と弾丸の代わりに使っているのは関税と他の経済制裁だ。なんと礼儀正しいことか。「我々は何千人もの人々をフェンタニルで失っている。これは我々が取り組んでいる事の中で最も重要だ」とトランプはツイートした。
トランプは23日に、中国がフェンタニルの氾濫を阻止しないことが関税引き上げのおもな理由だと説明した。中国製フェンタニルが引き起こした何万人もの死に激怒し、トランプは「習主席はこれは終わると言った――終わっていない」とツイートした。
実際に中国は米国の法執行機関に協力することを拒んでいる。連邦政府当局は、フェンタニルとフェンタニル原料を製造し、インターネット上で米国人に売りさばいた中国の麻薬犯罪の中心人物3人を起訴した。中国は被告人を米国に引き渡そうとせず、それどころか彼らに活動を自由に継続させている。
ランド研究所のブライス・パルドのように、トランプ批判者は、中国には毒工場を閉鎖させる調査官や法執行機関がないから、中国に厳しい態度を取っても無駄だと主張している。それはナンセンスだ。一人っ子政策――中国が長年行った、寝室での行為に関する指示――を強制する残忍な全体主義組織を持つ国なら、インターネット上で販売され、郵便物に入れられた物を管理できる。中国の合成オピオイド工場は通常、インターネット端末の前に座る数百名の従業員を雇い、公然と致死的な品物を販売している。
オバマ政権、そして多くの民主党議員は今でも、正しい方策は、供給を絶つのではなく殺人ストリートドラッグへの要求を抑え、薬物治療プログラムに予算を付けてメディケイドを拡大させることだと主張している。
実際は両方やる必要がある。――供給者を攻撃し、中毒者を治療する。戦争では、負傷者に包帯を巻く間も敵との戦いはやめないものだ。
ここ数年、米国郵政公社は中国の麻薬ディーラーが最も好む出荷方法になっている。連邦政府は、中国からの全ての小包に内容と送付元の明記を義務付ける法律を2018年に議会が成立させるまで、何もしなかった。今でも、毎日届く130万の国際小包のうち、税関国境警備局が実際に検査するのは約100個だけだ。23日にトランプは「全ての運送業者に、中国からのフェンタニルの配送を全て探し出して拒否するよう命じる」とツイートした。骨の折れる仕事だ。
中国製フェンタニル供給品の中には実際、メキシコに出荷されてから南部国境経由で米国に密輸されるものもある。国境で小包の中からフェンタニルを探すのは、「干し草の中で1本の針を見つける」ようなものだと、議会報告書は結論付けた。
トランプは、麻薬を国境で食い止めることが、中国に発送をやめさせることより成功しにくいものだと分かっている。
一方26日朝、トランプは中国の高官が25日夜に米政府のカウンターパートに連絡してきたと発表し、「(交渉の)テーブルに戻ろう」と述べた。
トランプの貿易に関する強硬姿勢は、米国の巷での麻薬による虐殺を止めるだろうか?それは可能だ。トランプは25日朝、中国の変調について吟味し、中国は「人生がどういうものか理解している」と述べた。
ベッツィー・マッコーイは元ニューヨーク州副知事