<引用元:ニューヨーク・ポスト 2019.5.4>マイケル・グッドウィン氏による寄稿
彼らはやった。ついにやってしまった!ニューヨーク・タイムズは、ドナルド・トランプの2016年選挙活動に対するスキャンダラスなスパイ行為の手掛かりを取り上げ、真相究明に加わろうとしている。
大統領と一部の支持者がそうした反応を示したのは、FBIがトランプ陣営のジョージ・パパドポロスとの2016年9月の会議に「覆面捜査官」を送っていたことをタイムズが報道してからのことだ。声援を送る人たちはその記事を、ロバート・モラー特別検察官の報告書に続き、タイムズでさえ複数の事実から悪名高い反トランプ的意図を捨てざるを得なくなっている証拠と見なした。
それが本当でありさえすればいいのだが。現実には、トランプが「スパイゲート」と呼ぶことの真相解明にタイムズが完全に注力することはまずありえないことだろう。
同紙はまだバラク・オバマのホワイトハウスの不正工作と、大ロシアヒステリーの拡散で果たした同紙の役割を擁護している。両者は切っても切れない関係だ。
2016年のロンドンでの会議に関する2日の記事は、タイムズが正気に戻っているというより、焦りを感じているディープ・ステートを守るために意図された攪乱と見なしたほうがいい。ビル・バー司法長官が捜査官を捜査すると約束したことで彼らは驚き、反撃のためにお気に入りのメディアの召使いを利用しているのだ。
その結果、記事は「手を加えられ、限定的なたまり場的」アプローチを取っており、全体像が巧みに隠されたまま断片が新事実として提示されている。
一面記事では捜査官をアズラ・タークとしているが、タークの本名も彼女が誰のための仕事をしているのかも全く不明だ。
記事では彼女がFBI捜査官だと繰り返し示唆しているが、直接的にはそう書いていないことから、おそらくそうではないのだろう。実際、記事を書いた3名の記者の1人、アダム・ゴールドマンはCNNに、自分たちがタークを政府捜査官と呼んだのは「ある理由からであり、それ以上は触れないでおく」と話した。
それはジャーナリズムではない。ディープ・ステートの使い走りになるということだ。
当然ながら全ての情報源は匿名であり、概して「作戦に精通する人々」とされている。私の推測では、ジム・コミー、アンドリュー・マッケイブ、そしてバーの標的となっていることを心配する他の汚職捜査官たちがそこには含まれているのだろう。
彼らが心配するのも当然だ。特にリークに対するバー長官の捜査については。タイムズがトランプをロシアのスパイと描いてきた中でずっと、記者の同じ情報源の中にはFBI高官たちがいたに違いない。
そのため2日の記事では、「大統領選挙陣営に向けた作戦」は、2016年の選挙を混乱させようというロシアの取り組みに対して「FBI内部の警戒レベル」を明らかにするものだと主張し、スパイ行為はまったく不適切ではないと読者に断言している。
それは、オバマ政権が敵対政党の大統領選挙陣営を、場合によっては不正にスパイしようとしたことについて説明するには奇妙で極めて偏ったやり方だ。共和党の大統領が民主党の候補者をスパイしてたなら、それがどのような文章になったか想像してみて欲しい。
またなぜ記者たちはスパイ行為が正当であり、トランプが選挙に勝てなくするための計略でないと言い切れるのだろうか?それは彼らの情報源がそう言っているからであり、このことが、タイムズが基準を廃止するのがなぜ間違いかを示す絶好の実例だと言える。
数十年の間、非難の意を含む主張を行う情報源は、読者がその意図や信頼性を判断できるように明示されなければならないと編集者は主張してきた。情報源を匿名のままにすることで、タイムズは読者が何もわからないようにしている。
この場合ではそれが目的だ。
「スパイ」という言葉に関して、たとえバー長官があえてそれを使用しているのに同紙はその言葉を使おうとはしない。恥ずべき偽善行為だ。
アダム・ゴールドマンの略歴でタイムズは、彼がAP通信社のチーム在籍中に「ニューヨーク市警によるイスラム教徒スパイプログラム」を暴露したことでピューリッツァー賞を受賞したとしている。
タイムズは、NYPDが嫌いだから警察は「スパイ」していたと書いたわけだ。オバマがトランプに対してスパイすると、それは「作戦」になる。
アズラ・タークに関しては、記事は単にパパドポロスがすでに暴露したことに追いついただけだ。彼の回顧録、「Deep State Target」が3月に出版されたが、彼が初めて彼女のことを表に出しており、トランプ陣営がロシア人とつながりを持っているかどうかに関する情報を探り出そうと、「自分の体を見せつけた」「思わせぶりな」ハニーポットだと表現していた。
またパパドポロスはタイムズにはない重要な点を指摘している。彼はタークがCIAとつながりがあると考えており、スキャンダルに大きな側面を与えることだ。「オバマのCIAもトランプをスパイしていた」という見出しを想像してみて欲しい。
ジョン・ブレナンに、君の順番が回ってきたと連絡しないといけない。
最後に以下の2点がある。
タイムズは最初2018年5月に、FBIが2016年にパパドポロスと接触したことを報じた。同氏はワシントン・ポストと共に、捜査局が2人のトランプ陣営スタッフと話すための「情報提供者」を送ったのは、「両名がロシアとつながる疑わしい接触を持っていたという証拠を受けて」からのことだったと同時に暴露した。
両紙が同じ記事を出したという事実が、2日の記事のように、神経質な内部関係者が画策した防衛的なリークだったことを示している。また無理もないことだが、その後トランプは、「少なくとも1人のFBIの代理人が自身の陣営に政治的な目的で、送り込まれていた」とツイートを返していた。
それに応じてタイムズは、基本的にそれが正しいと認めたが、「情報提供者が不正な行為を行ったという証拠は浮上していない」し、FBIが情報提供者を利用したのは捜査官がヒラリー・クリントンのメール捜査の後で、「大統領選挙を再び混乱させることを警戒」していたためだった、というばかげた主張で作戦を擁護した。
言い換えれば、彼らはトランプ本人のために秘密の情報提供者を送ったというのだ。これは、聴取前の時点でクリントンを無罪にするという手紙を書いたのと同じFBIだ。
奇妙なことに、タイムズもワシントン・ポストもその情報提供者の身元を1年前には特定しなかったが、他のところはすぐに、それがステファン・ハルパーという米国と英国の情報機関とつながりのあるケンブリッジ大学教授であることを明らかにした。
タイムズは、安全性を確保するために彼の身元を隠蔽していたと述べた。またパパドポロスとの会議で、その情報提供者に「アシスタントの1人の若い女性」が同行していたことも不用意に示していた。
今同紙は、その女性がアシスタントではなく、「政府の捜査官」だとしている。
タイムズはアズラ・タークについて何を知り、いつそれを知ったのか?また彼女について他に何を隠しているのだろか?
また2日の記事は非常に奇妙な結論になっていた。劇的に軽視された結論の中では、ハルパーについてこう述べている。「2017年に中国専門家グループの1人としてホワイトハウス顧問との面談のために招かれていた。ハルパー氏はFBIに招待のことを知らせたが、助言は与えられなかったと事情に詳しい人々は述べた」。
分かりやすく言えば、トランプ陣営に対するスパイに協力したFBI情報提供者が、トランプ政権下のホワイトハウスに偶然に招かれ、FBIは彼に行くように伝えたが大統領には知らせなかったということだ。
記事には、ハルパーのグループがピーター・ナヴァロ(通商製造業政策局長)に会ったとある。ナヴァロはその後FOXラジオで、ハルパーの裏切りに「だまされた」ように感じたと話した。
ナヴァロが自分につらく当たりすぎることはない。FBIとCIAは国をだました。そして2016年と2017年に行ったことについて白状することをまだ拒んでいる。
ニューヨーク・タイムズに関しても、そこで真実が見つかることを期待すべきではない。かつての「paper of record」はだましやスパイを行う人たちを擁護している。