トランプ大統領は、2018年中間選挙が終わった直後、ジェフ・セッションズ司法長官を事実上更迭し、司法長官の首席補佐官を務めるマシュー・ウィテカー氏を一時的な司法長官代理に任命すると発表した。この動きに主要メディアと米民主党は激しく反発し、ウィテカー氏のロシア疑惑捜査からの忌避を要求し、抗議デモまで起こっている。
セッションズ長官はロシア疑惑の捜査への関与を忌避し、ロッド・ローゼンスタイン司法副長官が捜査を統括してきた。ロバート・モラー特別検察官を任命したのもローゼンスタイン氏であり、それを監督する立場だった。
ローゼンスタイン氏は、トランプ大統領を解任に追い込むために、会話の録音まで画策していたとされており、共和党議員からのロシア疑惑捜査資料の提出請求にも、対応を故意に遅らせ、議会委員会によるFBIのFISA乱用疑惑捜査を妨害してきたとされている。ウィテカー氏が司法長官代理となれば、この流れが大きく変わる可能性がある。反トランプ派が反対するのも無理もないことだ。
まず、ウィテカー氏任命の法的根拠とその背景について、ナショナル・レビューのアンドリュー・C・マッカーシー氏による論文(Sessions Out, Whitaker In — For Now, and Maybe for Good )から引用したい。
まず、ウィテカー氏の司法長官代理としての法的な根拠について、全く合法的であることをマッカーシー氏は次のように説明している。
マシュー・ウィテカーは、2017年10月にセッションズの首席補佐官としてトランプ政権司法省に入った。日付には関係がある。大統領は、1998年のVacancies Reform Act(関連条項は合衆国法典タイトル5の3345項と3346項で成文化)に従いウィテカーを司法長官代理に任命した。ウィテカーは上院の承認を必要としない職務(首席補佐官)に就いていたので、上院の承認を必要とする役職(司法長官)の「代理」になれないと示唆する解説がいくつかあった。それは違う。Vacancies Act(欠員法)では大統領が代理を指名することが可能とされており、指名された人物がその省庁で最低90日間適正に高い地位で務めたことがあるなら、210日間代理を務めることができる。ウィテカーは適格だ。
さらに重要な点として、同氏がかねてから指摘していた、ロッド・ローゼンスタイン司法副長官のモラー捜査に関する2つの利益相反について再度取り上げている。つまり、ロシア捜査の現状が実はフェアな状況ではないのであって、ウィテカー氏が引き継ぐことで、司法が政治的に歪められることが正される可能性があるのだ。
要約すれば、特別検察官は、元FBI長官のジェームズ・コミーの大統領による解任を司法妨害の面で精査してきた。ローゼンスタインは解任に際立って関与した人物であり、よって重要な証人だ。さらに、ローゼンスタインは、トランプ陣営の元アドバイザーである、カーター・ページに対する監視を求める最後のFISA令状申請に署名した。その申請は議会と司法省監察官の捜査対象となっている。ローゼンスタインは、モラーの捜査を根拠の一部として利用し、議会からの関連情報請求を拒んできた。ページへの監視が、モラーのロシア捜査と密接な結びつきがあるのは明白だ。ローゼンスタインの行動が精査されてから―またこれが前述の、コミー解任への関与によってもたらされる明白な利益相反に加えてのことだとすれば―ローゼンスタインが、自身の倫理的感受性に疑いの目を向けられるより、身を引くことを望むだろうと人々は思うだろう。
また、マスコミが、ローゼンスタイン氏の利益相反に目をつぶりながら、ウィテカー氏の論文を曲解して攻撃していることを次のように指摘している。
マスコミは依然としてローゼンスタインの利益相反に無関心のままであるが、ウィテカーの利益相反とされるものについては非難している。それはウィテカーがトランプ政権に入る2カ月ほど前にCNNに欠いたオピニオン記事から持ち上がったものだ。ウィテカーは、大統領の財務状況に関するいかなる捜査も、モラーの権限の範囲を超えると主張したとされている。さらにまた、トランプ大統領の軽蔑的な言い回し―「魔女狩り」―を使用してモラーの捜査をけなしたとして非難されている。それはウィテカーが書いたことを歪曲しすぎている。
(中略)
その上、ウィテカーは、モラーがどのような状況でも、トランプの財務状況を適切に検証し得ないとは言っていなかった。彼が言ったのは、そうするためにモラーは「ロッド・ローゼンスタインに追加の権限を求める」必要があるだろう、ということだ。それは実に適切な手続きである(ウィテカーがそうしたように、その命令がモラーの法的権限の制限要因を規定するとみなすのであれば)。
最後に、ウィテカーはモラーの捜査が「魔女狩り」であるとは言わなかった。彼が言ったのは、モラーが、ロシアとのつながりがないまま、またローゼンスタインによる任命の範囲を正式に拡大しないままにトランプの財務状況を捜査するのであれば、魔女狩りになる可能性がある、ということだった。それが本当であるのは明白であって、モラーが、司法副長官の言葉を借りれば、「無誘導ミサイル」でなないとするローゼンスタインの公然の主張で明確に示された事実なのだ。
(中略)
それはそうとして、ウィテカーは、ロシア捜査について広範囲にコメントしておらず、彼の論文中のコメントは議論の対象とはならないと見るべきだ。それらは、ロシアの選挙干渉を捜査することの価値を問題にしてはおらず、モラー捜査を中傷してもいない。単に捜査が、ローゼンスタインが公に断言しようとしていた範囲内に留まるべきだと主張しているにすぎない。
さて、マスコミ各社は「突然」の解任を劇的に報道したが、実のところ8月の時点でも予期されていた動きだった。
Bloombergは8月24日の記事(Key Republicans Give Trump a Path to Fire Sessions After the Election)で、共和党幹部の2人の名前を挙げ、選挙後に司法長官解任が行われることを示唆していた。
記事によると、上院共和党のリンゼー・グラム議員とチャック・グラスリー議員が、以前はセッションズ長官の解任に否定的であったものの、この時点では容認に傾き、選挙後の解任についてほのめかす発言をしていた。
トランプ氏のいつもの突飛な行動とも取れるかもしれないし、いずれにしても憶測の域を出ないが、入念に計画された解任劇だった可能性もあるということだ。
トランプ大統領は訪問中のパリから以下のようにツイートした。
マシュー・G・ウィテカーは高い尊敬を受けたアイオワの元連邦検察官だ。ジェフ・セッションズによってその首席補佐官に選ばれた。私はウィテカー氏を知らなかった。同様に首席補佐官としても、主としてセッションズ長官と同行していたのを除いてウィテカー氏のことを知らなかった。社交的な交流はない。
ウィテカー氏は@SenJoniErnst(ジョニ・アーンスト上院議員)、@ChuckGrassley(チャック・グラスリー)上院議員、@TerryBranstad(テリー・ブランスタッド)大使、フェデラリスト・ソサエティーのレオナルド・レオなど多くの人からとても高く評価されている。彼が傑出した司法長官代理となるのを確信している!
ここで記事を終える予定だったが、思いもよらない報道が出た。ウォールストリート・ジャーナルによると、ウィテカー氏が以前役員を務めていた企業が、FBIの捜査を受けているということが判明したというのだ。捜査開始は2017年6月とされ、現在も捜査中だという。
記事では情報源として被害者による情報提供を示唆しているが、これほどタイミング良くこうした報道が出てくるのは、「ディープ・ステート」の必死の抵抗とも受け取れる。
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