<引用元:FOXビジネス 2018.6.26>
トランプ大統領の貿易に関する辛辣で報復的な言葉とは裏腹に、米国のCEOは大統領の税制改革計画の活用において何も無駄にしてはいない。米経済分析局(BEA)によると、第1四半期に3,000億ドル(約33兆円)以上が米国に送還され、記録上最高の数字となった。
大統領経済諮問委員会のケビン・ハセット委員長は6月、FOXビジネスの「Varney & Co.」の中で次のように語った。「税金を回避するために海外に工場を建設していた米国企業は、税制法案のために動きを止めました。資金を全て国内に戻しています」
BEAは送還が増加した主な要因を、企業が米国に資金を戻す際に国外での利益に税金が掛からなくなったことだとしている。ハセット氏はこう話した。「そのような現実を改善しました。実にばかげたことでしたので」比較すると1年前の同じ期間には、わずか380億ドル(約4兆2千億円)しか送還されていなかった。
BEAは送還した企業の名前と総数を明かしていないものの、最新のデータによると、CEOたちは国外で稼いだお金をより一層米国に戻すという約束を守っているようだ。2017年12月終わりにトランプ大統領が税制法案に署名した直後、そのように約束していた。
米国に戻される資金の大部分がどのように使用されるのかは明確ではないが、経済成長支持派の経済学者は雇用、賃金の上昇、またその他米国の労働者に利益をもたらし最終的に経済全体に浸透するような活動に利用されることを期待している。このことから多くの経済学者はGDPの予測を3パーセントから4パーセントに引き上げている。
ところで、これまでに資金送還が顕著に上昇したのは2005年のことであり、その1年前にはAmerican Jobs Creation Act(雇用拡大法)が可決していた。ジョージ・W・ブッシュ大統領の下のもので、免税期間を提供するなどの税制優遇策が取られた。けれども、ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏はFOXビジネスに対して、当時の経済に対する恩恵は最小限のものであって、今回も同様になるだろうと話している。同氏は「送還された現金は株の買戻し、増配、M&Aのために用いられるだろう。これら全てが経済に対して重大な影響を与えることはない」と述べた。
しかしながら当時と今では違いがある。米国の大企業の中には、一斉に従業員に手当の拡大や他の経済的特典と併せて、一時的なボーナスを支給して税制改革を称賛したところもあった。例えば国内最大の納税企業であるアップルは、税制改革のために今後5年間で3500億ドル(約38兆5千億円)以上を米国経済に投資すると1月に発表した。iPhoneとiMacのメーカーである同社はまた、380億ドル(約4兆1800億円)の税金を支払う予定であり、同様の支払い額としては最大となるとその時アップルは発表していた。FOXビジネスはアップルに送還の状況について確認したが、回答はなかった。
考慮すべきもう1つの要素として、下院歳入委員長のケビン・ブレイディ議員を含む多くの共和党議員は減税を恒久化しようと推進しており、税制改革2.0としてさらなる税制優遇策を展開しようとしているようだ。そうなれば国内のビジネスリーダーにさらなる確実性をもたらす可能性がある。
2017年12月に税制改革が成立する前、米国公共利益調査グループの追跡では、米国企業は国外の口座に2兆6000億ドル(約286兆円)を保持していたと推定されていた。