<引用元:FOXビジネス 2020.1.29>クリスチャン・ウィットン氏による寄稿
ドナルド・トランプは大統領候補者の時、NAFTAを「過去最悪の貿易協定」と呼び、置き換えを約束した。トランプは1月29日にその約束を果たし、北米をカバーする新たなUSMCA貿易協定に署名した。
協定はトランプのこれまでで最大――それどころか史上最大のものだ。米国の年間貿易取引高の1.4兆ドル――先日の中国との協定の約2倍を占める。また最も重要なこととして、米国の輸出の約4倍、輸出品・サービス約6,630億ドルにまで、協定の結果として成長が見込まれる。
トランプの成果はその他の点では分断した議会の中で、共和党と民主党の圧倒的支持を勝ち取った。
新協定は米国にとっての明白な勝利であり、長い目で見ればカナダとメキシコを助けることになる。場合によっては300パーセントにも及ぶ不公平なカナダの関税を終わらせ、米国の農家と牧場経営者にとって公平な機会を作り上げる。
メキシコは自動車関連の製造業の職場で賃金を引き上げることが義務付けられ、米国の雇用の輸出と環境基準を密かに回避することにつながるインセンティブが排除される。
外国人が争いの解決で米国の法廷を回避する能力を制限することで、新協定はNAFTAで失われた公正さと米国の主権を取り戻す。
政府間の争いに対しては、機能不全の世界貿易機関から切り離された解決機構を作っている。
またUSMCAは知的財産とデジタル取引を保護する新基準も作っており、他の貿易協定にも含まれる可能性がある。つまり、米国が主導する高成長産業の公正を意味する。
だが協定の総和はこうした部分を遥かに超えた価値を持つ。USMCAの制定は、見掛けだけになりつつある世界秩序に根本的な転換を示すことになるだろう。
多くの国は中国との偽の「自由貿易」の結果に気付き始めている。過去20年の間それがグローバリストのお気に入りだった。
そうした取引は北京にとってだけ自由であり、中国市場に対するアクセスの約束を見返りとして外国の資本、雇用、知的財産が盗まれた。今その約束は幻想であることが露呈し、中国の崩れかかった経済は失速の音を立てつつある。
はるかに重要なことは、USMCAのような貿易協定が同様の経済と法の支配を持つ国の間でのものだということだ。そのためトランプは日本と韓国とも貿易協定の交渉を行った。
うまくいけば、トランプは台湾との交渉を始めるよう指示するだろう。法の支配があり、米国からエネルギーと他の製品をもっと購入したいと考えているからだ。(そして既に米国製武器の大きな買い手でもある。)これをお膳立てすることで、米国は北太平洋周辺の自由主義国の、巨大な貿易圏の基軸となるだろう。――それは浮上しつつある新世界の最も経済的に重要な部分だ。
(居候の英国は貿易協定を求めているが、電気通信システムで中国のテクノロジーとスパイウェアを断つという米国の要求を受け入れることもないだろう。ディールに値しない)
トランプが国内でやり遂げた経済再生と相まった時、歴史家はUSAMCAの制定を米国とそのパートナーが中国、ヨーロッパ、また他の国家統制経済を見捨てた変曲点として振り返るだろう。
クリスチャン・ウィットンはドナルド・トランプ政権、ジョージ・W・ブッシュ政権で上級顧問を務めた。「センター・フォー・ザ・ナショナル・
インタレスト」の戦略・公開外交専門の上席研究員であり、「Smart Power: Between Diplomacy and War」の著者である。