<引用元:ワシントン・エグザミナー 2020.1.7>ラマン・ガバミ(Raman Ghavami)氏による寄稿
米国がカセム・ソレイマニ将軍の殺害に成功したことはイラン・イスラム共和国にとって壊滅的な損失だ。同国はしばらくの間、地域の至る所で弱い者いじめに従事してきたが、同氏の死は同国の未来にとって深刻な結果をもたらす恐れがある。
アリー・ハメネイ最高指導者指導者は、米国の最大限の圧力運動に対抗する上で有用な中心人物としてソレイマニに頼っていた。米国はその中でイランの攻撃を罰するために経済制裁を利用していた。しかもソレイマニの死は、彼が設立して支援していたコッズ部隊と民兵グループの中に権力の空白をもたらす可能性がある。
真に彼を置き換えることは不可能かもしれない。ソレイマニは単独活動で有名であり。自身に忠実な部隊との個人的関係やイラン内外の金銭上のネットワークを基盤にしていた。したがって真の後継者はおらず、このことがイランの影響力に現実の脅威をもたらす。
その上ソレイマニは、ハメネイにとって最も重要な外務大臣役であり、シリア、イラク、イエメン、レバノン、そしてパレスチナでのテヘランの政策に責任を持つ中心人物だった。ソレイマニはイランの「シーア派の三日月地帯」戦略の立案者かつ執行者であり、個人的に地域の各首都に大使を任命していた。
しかもソレイマニはイランで最も重要な司令官であり、イスラム革命防衛隊とイラン軍の司令官よりもさらに中心的な人物だった。ハメネイの最も信頼を受けた側近であり、米国、イスラエル、湾岸諸国に対抗する上でイランで最も不可欠な戦略家だった。イラン政権が歴史上でそのような損失を被ったことはなく、ソレイマニの死はイランの支配者層の間に計り知れない衝撃とパニックをもたらした。
それ故にイラン高官は米国に対する「報復」のために国内での支持を活性化させようとする。ところが一般のイラン人はソレイマニの死について政権とは全く異なる見方をしている。イラン国民は、ソレイマニが国内の課題のために喉から手が出るほど必要とされる資金を、イエメン、イラク、レバノン、シリアでの不安定化の扇動に転換したために苦しんできた。
イラン政権、政権支持者、そして彼らの代理人はソレイマニを殉教者、象徴的人物、また「抵抗の枢軸」の司令官と表現する。一方、普通のイラン人と地域の他の多くの人々は、ソレイマニがイランと地域全体で何万人もの死をもたらした残忍な殺人者であると知っている。
イランの政権関係者と国営メディアがソレイマニを「イランのチェ・ゲバラ、最高指導者の敬愛する人物、イランの愛国者」と説明する一方で、多くの普通のイラン人は彼の死を祝っている。ソーシャルメディア上のイラン人は自分たちが喜んでいる写真や動画を投稿して、トランプ大統領に感謝し、ソレイマニを嘲笑するハッシュタグを使用している。その上シリア人もソレイマニの死を祝っており、彼のことはシリアの悲惨な内戦とシリア人の子供たちが死んだ原因となった中心的人物と見なしている。
Mana Nistani, an Iranian cartoonist’s view on the killing of Qasem Soleimani.
Mass majority of Iranians hated Qasem Soleimani as he was brutal against people not just in Iran but also across the region. pic.twitter.com/53RcgvNdxJ
— Raman Ghavami (@Raman_Ghavami) January 3, 2020
ソレイマニはイランの政権と関係者から英雄だと説明されているかもしれないが、普通のイラン人はソレイマニが殺人者だったと知っている。彼の死は政権の終焉を求めるイラン国民に希望を与えた。
ラマン・ガバミ(@Raman_Ghavami)はロンドンと中東を拠点とするアナリスト。現在は反政府活動とその対策に焦点を絞って英国のコンサルタント会社の仕事をしている。