<引用元:ウォールストリート・ジャーナル 2018.8.30>WSJ紙論説委員 キンバリー・A・ストラッセル(Kimberley A. Strassel)氏による論説
司法省弁護士のブルース・オーについて、ほとんどのマスコミの説明を信じるなら、彼は取るに足りない存在であり、トランプ大統領が注目しただけの価値はないということになる。オー氏が8月28日に、連邦捜査局が監視活動と情報源のルールを乱用したことに関する最悪の疑惑を確認したとすれば、これは注目すべきことだ。
オー氏が注目を集めているのが今だけだとするなら、その理由は2016年のトランプ陣営に対するFBI捜査における彼の役割を解明するのに、非常に多大な努力を要したからだ。この1年をかけて、議会捜査団はオー氏の妻ネリー氏がフュージョンGPSに勤務していたことを突き止めた。フュージョンGPSは、ヒラリー・クリントンに雇われて悪名高い文書をFBIに提供した対立候補リサーチ会社である。彼らはその後、オー氏自身がフュージョンGPS代表のグレン・シンプソンと文書の作者であるクリストファー・スティールとの間で非常に頻繁なやり取りをしており、その中から得た情報をFBIに渡していたことを発見した。つまりFBI捜査官は文書の疑惑を、内部と外部両方から供給されていたのだ。
今週のニュースは、オー氏からFBIへの情報提供に警告が伴っていたことだ。議会はすでに、オー氏がスティール氏の政治的偏向に気づいていたことを知っている。オー氏は2016年9月にスティール氏と会話した内容をメモしており、(ロシア疑惑)文書の作者であるスティール氏は「必死でドナルド・トランプが当選しないように努めており、トランプが大統領にならないよう熱心に働いている」と記述していた。議会の消息筋の話では、オー氏は28日に、自身がFBIに対してスティール氏の偏りと動機に注意を促し、情報源に信頼性の問題があると口頭で警告していたことを明らかにした。またオー夫人がフュージョンGPSで働き、文書のプロジェクトに加担していたことも当局に知らせていた。
その上オー氏はこの情報を、FBIが2017年10月に外国情報監視裁判所に対してトランプ陣営のカーター・ページに対する令状の申請を行う前に伝えていた。それでもFBIは申請時にこの警告について全く触れず、逆にスティール氏のことを「信頼できる」情報源であるとしていた。また申請では、司法省高官の配偶者が文書に寄与しており、FBIが捜査に利用していた文書から経済的な利益を得ていたことに触れていなかった。これが問題であるのは、FBIが非常に大きな利益相反を警告しなかったことと、スティール氏の成果物が完全に彼自身によるものでなかったという両方の理由による。
ページに対する4つの令状には、それらを確認した人々によると、オー氏についての言及は―直接の形でも隠した形でも―全くなかった。捜査の間に監視申請の背景にある内容と情報源について、FBI捜査官と十数回会話を交わしたにもかかわらず、である。オー氏はこれらの会話に、FBI捜査の幹部全員がさまざまに関わっていたことを明確にしたという。それは、元主任捜査官のピーター・ストラック、元FBI弁護士のリサ・ページ、そして元FBI副長官のアンドリュー・マッケイブのことだ。つまり幹部たちは、オー氏の役割、情報、相反について十分に承知していた。
オー氏のインタビューで、FBIが外国情報監視法を悪用した動かぬ証拠が出たと、共和党議員がほのめかして言っているのは以上のようなことだ。テキサス州のジョン・ラトクリフ議員は29日次のようにツイートした。
「一昨日まで我々は、FBIと司法省がFISA申請の際気づいていた重要な事実を開示していないと考えていた。ブルース・オーが正直に証言したのであれば、今それが事実だったということが分かる」
(司法省は監察官の捜査に言及し、コメントを差し控えた)オー氏のFBIとのやり取りに関して今週彼は議会捜査団に、当初自身からFBIに働きかけたが、当局もその後スティール氏についての情報を求めてきたと話した。その接触が起きたのは、スティール氏がマスコミにリークして局のルールを破ったことで、FBIが2016年10月に彼を情報源から外した後であった。つまり、スティール氏の動機について警告を受けた後でさえ、またスティール氏をルール違反で解約した後でさえ、FBIは彼の情報を求め続けていたのだ。裏ルートとしてオー氏を利用して。このことは間違いなく、機密の情報源とのやり取りについてのFBI管理マニュアルに違反している。
オー氏がスティールの情報を報告しに来たことから、そのままFBIの警報が作動すべきだった。スティール氏はすでに7月初めまでFBIと直接やりとりしていた。ではなぜスティール氏は司法省の情報源に働きかけに行き、同じ疑惑を当局に再度送ったのだろうか?その答えはおそらく、フュージョンの連中がFBIに最大限の圧力を加えて、行動を促したかったということだろう。FBIが敢えてそのような圧力活動の背後に何があるか突き止めようとしていたなら、明白な答えを見つけ出したことだろう。政略という答えを。
ただしFBIが気にしていなかった場合は別だ。FBIが偏向について、利益相反について、また文書の背後の政治的な会計処理について知ろうと欲しておらず、また間違いなく監視裁判所には知られたくなかったという証拠は増え続けている。FBIが捜査したかったのはドナルド・トランプだったのだ。