<引用元:米国司法省 2020.7.16>
アンドリュー、温かいご紹介に感謝いたします。そして、ミシガン州東・西地区検事であるアンドリューとマットが、ミシガン州の人々と本日この場に参加されたミシガン州法執行当局のために尽力されていることに、心から感謝の意を表したいと思います。我々はあなた方の取り組みに本当に感謝しています。またアンドリューが話したように、私の話の後で彼らが中国戦略に関するプレゼンテーションを行う予定です。ですからお時間があれば、ぜひそのためにとどまっていただきたいと思います。それからジェラルド・R・フォード大統領博物館の責任者とスタッフの皆さん、特にイレーヌ・ディディエに、このイベントを主催してくださったことを感謝申し上げたいと思います。そしてフォード大統領財団とジョー・カルバルーソ事務局長にも感謝いたします。
普通の状況であってもこうしたイベントを企画するのは骨の折れることですが、現在の状況では特に困難なことですので、本当に感謝しています。そして参加していただいた全ての皆さんに心から感謝しています。多くの方が州のあちらこちらから来られたことを知っていますし、こうした話のためにご足労いただいたことを感謝いたします。私がグランド・ラピッズにいたのは確か30年前のことでしたね、ジョン。私が州司法長官代理の時にジョン・スミエタンカは首席副検事補の1人であり、司法長官になるまで留任しました。彼はこの西地区で米国連邦検事を務めました。ですからジョン、あなたとここで会えてうれしく思います。
私はフォード政権に特別な絆を感じています。ですからこうした話のために本日ここに来たのは適切です。というのも私は1973年にCIAでの勤務を始め、その後フォード大統領が就任したからです。また局で行われていたことのために、私は彼が政権に参加させた一流の人たちと緊密に働く機会に恵まれました。その中の多くの人々と長年にわたって一緒に働く機会があり、そこには私の指導者もいました。私が会った人々の1人が当時の司法長官、エド・レビィでした。フォード大統領が彼を司法長官に任命したのであり、その肖像が私の会議室に掛けられています。そして彼の孫のウィル・レビィが私の首席補佐官です。ですから申し上げたように、私はフォード政権に特別親しみを感じています。私はあの政権の政治任命官ではありませんでしたが、私が長年にわたって共に働いた政治任命官の多くは、フォード政権の中で本当に最初の経験を得た人たちでした。
私は本日、我が国と世界にとって21世紀で最も重要な問題だと判明する可能性のあることに関して、お話しする機会に恵まれました。そしてそれは、中国共産党の世界的野望に対する米国の対応なのです。中国共産党は世界の巨大文明の1つを強権的手法で支配しています。中国共産党は、ルールに基づく国際的な制度を覆し世界を独裁政権にとって安全にするために、莫大な権力、生産性、そして中国国民の創意工夫を利用しようとしています。この挑戦に対して合衆国がいかに対応するかが、歴史的な意味あいを持つことになり、合衆国とその自由民主主義の同盟国が自分たちの運命を今後も決めていくかどうか、あるいは中国共産党と独裁政権の朝貢国が未来を支配するかを決定することになるでしょう。
1890年代以来、少なくとも、合衆国は世界の技術的リーダーでした。そしてその優れた能力から、我々の繁栄、何世代にもわたる米国人のチャンス、そして安全が実現しました。我々がファシズムの脅威と共産主義の脅威を後退させることで、世界の歴史で極めて重要な役割を果たすことができたのは、そのおかげです。昨今で問われているのは、我々がそのリーダーの立場とその技術的優位性を維持できるかどうかという点です。我々はそれが盗まれることを許す世代となるというのでしょうか?それによって実に子供たち、孫たちの未来が盗まれるというのに。
数週間前、ロバート・オブライエン国家安全保障担当補佐官が、中国共産党の思想と世界的野望について話しました。彼は、中華人民共和国に関して米国が受け身で甘い考えだった時代は終わりだと宣言しましたが、私も同意します。そして先週、クリス・レイFBI長官は、中国共産党が悪辣でさらに不正な行為によって、その野望をどのように追及しているかを説明しました。そうした行為には、産業スパイ、窃取、強要、サイバー攻撃、そして有害な影響力活動が含まれます。数日後にはマイク・ポンペオ国務長官から話があり、合衆国と自由世界にとって何が危機に瀕しているかをまとめてくれるでしょう。
さてクリス・レイは先週の演説の直後、中国共産党の指導者の1人が、彼の演説が「特に不快」だったと公表したと私に教えてくれました。私は彼に、今日の演説が「卑劣」と言われることを目指していると話しました。けれども「特に不快」でも良しとしましょう。しかし中国がそれをどのように描こうとしても、米国民が私の演説とマイク・ポンペオの演説を聞いて、中国が中国共産党に支配され続ける限りは中国との関係を再評価する気になってくれることを心から願います。
本日のこのフォード大統領博物館は我々にとってうってつけの場所です。ジェラルド・フォードは、米国が中国と再度関与した黎明期に政府の最高レベルでの役割を果たしました。もちろん1972年にニクソン大統領によって始まったものです。そして3年後の1975年、フォード大統領は中国指導者とのサミットのために中国を訪問しました。そこには毛沢東もいました。当時は冷戦後に中国が、合衆国と同等に近い競争相手として浮上するとは思いも寄らぬことでした。そしてその時でさえ、中国の計り知れない潜在的力の兆候はありました。1972年の中国訪問の共同報告書の中で、下院多数党院内総務のヘイル・ボッグスと少数党院内総務のジェラルド・フォードはこう書きました。「中国が切望する通りになんとか達成するなら、今後半世紀で10億の国民が自給自足できるだけの力として浮上する可能性がある。中国の見事な将来性の現実性というこの最後の印象は、おそらく我々の旅行で最も鮮明なものだ。我々小さな一団があの果てしない土地を旅する中、巨人が目覚め、竜が目覚めるようなこの感覚は、我々に熟考すべきことを多く与えた」
今約50年が経って、この2人の連邦議会議員が予見して熟考したことが実現しました。鄧小平の経済改革は中国の並外れた進歩のきっかけとなりましたが、その有名なモットーは「力を隠し蓄えよ」でした。それはまさに中国が行ったことです。中国の経済は、1980年の世界のGDPの約2パーセントから静かに成長し、現在約20パーセントに達しています。購買力平価に基づく推計では、中国経済はすでに我々の経済よりも大きいとするものもあります。
中国共産党の総書記である習近平は、毛沢東の独裁以来見られなかったレベルにまで権力を集中させており、「今、中国がステージの中央に近づいており、資本主義より優れた社会主義を築き上げ、アメリカンドリームを中国の解決策に置き換えている」と公然と語っています。中国はもはや力を隠しても蓄えていもいません。共産主義支配者の観点からすれば、中国の時代が到来したということです。中華人民共和国は現在、経済的な電撃戦に従事しています。世界経済の管制高地を獲得し、世界の卓越した技術超大国として米国を超えるための、積極的な、政府全体、実に社会全体を結集したキャンペーンです。この取り組みの中心的存在が、米国の技術的優位性を脅威にさらしています。国内生産高のための割り当てを禁止する世界貿易機関のルールをよそに、「中国製造2025」では、ロボティクスや電気通信といった産業向けのコア構成要素や基本資材において、70パーセントもの国内市場シェアを目標にしています。
中国が他の高度な産業経済の仲間入りをしようとしているだけでなく、それらに完全に取って代わろうとしているのは明白です。「中国製造2025」は、中国が国主導の重商主義経済モデルを反復してきた中で最新のものです。世界市場の米国企業にとって、中国との自由で公正な競争はずっと幻想でした。競技場を自分の利益になるように傾けるために、中国の共産主義政府は略奪的で多くの場合非合法的な戦術、通貨操作、関税、割り当て、国主導の戦略的投資、買収、窃取、強制的な知的財産の移転、国の補助金、ダンピング、サイバー攻撃、そして産業スパイを幅広く完成させてきました。連邦経済スパイ罪訴追の約80パーセントが、中国の国家利益のために企てられた行為だとされています。また企業秘密窃取の約60パーセントは中国に関連するものでした。
また中国は、ユーラシア、アフリカ、そして太平洋の重要な通商路とインフラを支配しようとしています。例えば南シナ海は、世界の海運の約3分の1が通過するわけですが、ほとんど全ての水路に対して広範囲の歴史的に疑わしい主張を行っており、国際法廷の判決を無視して人工島を建設し、そこに前哨基地を配置して、隣国、船舶、漁船に嫌がらせを働いてきました。力と影響力を拡大するためのもう1つの大規模な事業が、一帯一路インフラ構想です。対外援助と宣伝されていますが、実際のところこうした投資は、中国の戦略的利益と国内の経済的必要性に役立つよう意図されていたようです。
例えば、中国は貧しい国に借金を積ませ、期日の再交渉を拒否し、その後インフラ自体を掌握することで批判を浴びてきました。2017年にスリランカのハンバントタ港でやったように。これは一種の現代版植民地主義にすぎません。一方で同様に重大なのが、世界のデジタルインフラをそのデジタルシルクロード構想によって支配しようという中国の計画です。
私はこれまでに、世界で最も強力な独裁国家が、5Gとして知られている次世代の世界的通信ネットワークを作り上げることを許すことの重大な危険性に関して、詳細に話しました。おそらく、人工知能のような他の最先端の分野で米国を超えようとする中国の取り組みは、比較的広く知られていないでしょう。機械学習やビッグデータといったイノベーションによって、人工知能は機械が顔認識、話し言葉の解釈、自動運転、そしてチェスのような、またもっと複雑な中国の囲碁のような技術を要するゲームを行うといった人間の働きを模倣することを可能にします。
2017年に中国政府は次世代の人工知能計画を発表しました。AIにおいて2030年までに世界のリーダーとなるための詳細な計画であり、どの国がAIで世界のリーダーとして浮上しても、少なからぬ経済力だけでなく、コンピューターの視覚を利用した情報収集といった幅広い軍事応用をを引き出すための最高の位置につくだろうというものです。技術的優位に対する中国の意欲は、希土類材料の独占計画によって補完されています。それは家庭用電化製品、電気自動車、医療機器、そして軍用装備品といった産業で不可欠な役割を果たしている物です。
議会調査部によると、1960年代から1980年代にかけて、合衆国は希土類生産で世界のトップでした。それ以来、生産はほぼ完全に中国に移りましたが、おもに人件費が安いことと経済・環境規制が緩いためです。合衆国は現在、危険なまでにこうした必須材料を中国に依存しています。総じて中国は米国のトップ供給国であり、輸入の約80パーセントを占めています。依存の危険は現実のものです。
例えば2010年に、中国政府は東シナ海での紛争中の島に関連する出来事の後、日本への希土類材料の輸出を削減しました。中国は我々にも同じことを行うおそれがあります。こうした重要な分野での中国の発展が裏付けるように、中国の略奪的な経済政策は成功しつつあります。100年間、米国は世界最大の製造国であり、我々は世界の民主主義の武器庫としての役割を果たすことができました。中国は2010年に製造業生産高で合衆国を追い抜きました。中国は今、世界の独裁政権の武器庫となっています。
中国はどのようにしてこの全てを達成したのでしょうか?誰も中国国民の創意工夫と産業を過小評価すべきではありません。同時に、誰も米国が中国の華々しい出世を可能にしたことを疑うべきではありません。中国は米国の援助と貿易の自由な流れから莫大な利益を得ました。1980年に、議会は中国に「最恵国」の通商上の地位を承認しました。1990年に、米国企業は中国の世界貿易機関加盟と通商関係の恒久的な正常化を強く支持しました。現在米中の貿易額は合計で約7千億ドルになります。
昨年ニューズウィークは、「米国の大企業がいかにして中国を再び偉大にしたか(How America’s Biggest Companies Made China Great Again.)」と題した特集記事を出しました。記事では、中国の共産主義指導部がどうやって市場アクセスを約束して米国企業を誘い出し、その後、米国の投資とノウハウから利益を上げて、どんどん敵対的に変わったかを詳述しています。中国は関税と割り当てを利用して、米国企業に技術を引き渡して中国企業とジョイントベンチャーを作るよう圧力を掛けました。それから許可を停滞させるような戦法を使用して、米国企業は規制によって差別扱いを受けたのです。それでも、フォーチュン500の大企業でさえ、中国政府を怒らせることを恐れ、進んで正式な苦情を申し立てようという企業はわずかでした。
米国企業が中国市場に依存するようになったのと全く同じように、今や合衆国全体として多くの不可欠な製品とサービスで中国に依存しています。COVID-19パンデミックはその依存にスポットライトを浴びせました。例えば中国は、マスクや医療用ガウンといった特定の保護具の世界最大の製造元です。3月に、パンデミックが世界中に広がる中、中国は米国企業を含む製造業者が他の必要とする国に輸出することを阻止し、自国のためにマスクを買いだめしました。
その後、プロパガンダを目的として不足を利用しようと試み、限られた量の欠陥の多い装備を出荷してから、外国の首脳にこうした品物の発送に対して公に感謝を表明するよう要求しました。医療用品の世界市場に対する中国の支配は、マスクとガウンだけではありません。中国は、米国に対する最大の医療機器供給元ですが、同時に中国の米国医療会社に差別的な待遇を行っています。中国政府は、外国企業を標的にしてより大規模な規制による徹底的な調査を求めており、中国の病院には中国製品を買うように指導し、米国企業には知的財産が盗難に対してより脆弱な中国に工場を建設するよう圧力を掛けました。
ある専門家が気づいたように、米国の医療機器製造業者は事実上自分たち自身の競合を作り出しています。また米国は、他の不可欠な分野、特に医薬品でも中国の供給品、中国のサプライチェーンに依存しています。米国は創薬においては今も世界のリーダーですが、中国は今、APIとして知られる医薬品有効成分の世界最大の生産国です。国防保健局のある高官は、「中国が合衆国へのAPI出荷を制限したり規制したりすれば、民間と軍用の両方で深刻な医薬品不足を引き起こす可能性がある」と指摘しました。医薬品の支配を達成するために、中国の支配者は他の米国の産業を骨抜きにするのに使ったのと同じ戦略を取りました。
2008年に、中国は医薬品生産を高付加価値産業に指定し、中国企業の補助金と輸出の払い戻し減税を増加させました。その一方、中国は組織的に米国企業を餌食にしました。米国企業によく知られた中国医療市場での障害には、薬物承認の遅れ、不公正な価格制限、知的財産窃取、そして偽造があります。製薬会社で従業員として働く中国人は、米国と中国の両方で企業秘密の窃盗で捕まっています。
また中国共産党は長い間、米国の教育医療センターと医療企業に対するサイバースパイとハッキングに従事してきました。実際に中国とつながりのあるハッカーが、コロナウイルスの治療とワクチンに関連する知的財産を盗もうとして米国の大学と企業を標的にしましたし、研究者の作業を邪魔することもありました。コロナウイルスの発生を隠ぺいしたことが発覚したために、中国政府は必死でイメージ戦略にすがり、何らかの医学的な大発明を自分のおかげだと主張できるようになることを望んでいるのかもしれません。こうした全ての例で明確になっているように、中国の支配者の究極的な野心は、合衆国と貿易(trade)することではなく、合衆国を襲う(raid)ことです。
あなたが米国のビジネスリーダーなら、中国に譲歩すれば短期的な利益がもたらされるかもしれませんが、最終的に、中国の目標はあなたに取って代わることです。米国商工会議所の報告書で評価したように、多額の投資と専門知識の共有と重要な技術移転が今後の中国市場の解放につながるという外国企業の考えは、中国でのウィン・ウィンとは中国が2度勝つという意味だという役員室での冗談に置き換えられつつあります。米国人は貿易と投資が中国の政治制度を自由主義化するだろうと期待しましたが、政権の基本的な特性は決して変わりませんでした。
香港に対する無慈悲な取り締まりがまたも明らかにしたように、中国は現在、天安門広場で戦車が民主派の抗議者と対峙した1989年の時と全く同じように、民主主義とは程遠いのです。相変わらずの一党独裁国家であり、中国共産党が、普通選挙、法の秩序、また独立した司法制度の抑制を受けない絶対的な権力を行使しています。中国共産党は自国の国民を監視し、社会信用スコアを割り当て、政府検閲の部隊を用い、反体制派を拷問し、洗脳・労働収容所に拘留された100万人のウイグル人を含めて宗教的、民族的少数派を迫害しています。
中国で起きたことが中国に留まっていたら、それでも十分悪かったでしょう。ところが、米国が中国を変える代わりに、中国はその経済力を利用して米国を変えようとしています。この政権の中国戦略が認識しているように、イデオロギーの適合を強制しようという中国共産党のキャンペーンは、中国の国境では止まりません。むしろ中国共産党は、米国を含め世界中で影響力を拡大しようとしています。大抵は、短期的な利益のために、米国企業は合衆国での自由と開放性を犠牲にしてまでその影響に屈してきました。
残念なことに、中国に屈する米国企業の例は枚挙にいとまがありません。ハリウッドを例に挙げます。ハリウッドの俳優、プロデューサー、そして監督は、自由と人間の精神を称賛することを誇ります。そして毎年アカデミー賞で、米国人は、この国でハリウッドの社会正義の理想がどれほど及んでいないかについて説教されますが、ハリウッドは今、中国共産党という世界で最も強力な人権侵害者をなだめるために、自分自身の映画を定期的に検閲しています。この検閲は、中国で公開される映画のバージョンだけでなく、合衆国の劇場で米国人の観客に見せる多くの映画に対しても影響を及ぼしています。
例えば、ヒット映画の「ワールド・ウォーZ」は、ウイルスによって引き起こされたゾンビによる世界の終末を描写しています。報道によると映画のオリジナル版には、ウイルスの起源が中国かもしれないと登場人物が推測する場面がありましたが、制作会社のパラマウント映画は、報道によると、中国での配給契約を獲得することを期待して、中国に関する内容を削除するようプロデューサーに命じました。その契約は実現しませんでした。マーベル・スタジオの大ヒット作、「ドクター・ストレンジ」で、映画製作会社は原作のコミックではエンシェント・ワンというチベット修道僧の主要キャラクターの国籍を、チベットからケルトに変更しました。
これに関して異議を申し立てられると、脚本家は、チベットがある場所で彼がチベット人だと認めるなら、10億の人々を仲間外れにする危険を起こすことになる、と説明しました。つまり中国政府が、「あなたが政治的になろうと決断するのだからあなたの映画は上映しない」と言うかもしれない、というように。これらは、中国共産党を満足させるために何とかして変更された多くのハリウッド映画の中の2つの例に過ぎません。オブライエン国家安全保障担当補佐官は、さらに多くの例を彼の演説の中で提示しました。しかし、脚本家とプロデューサーは敢えて限界に挑戦しないことを知っているので、多くの脚本は決して日の目を見ることはありません。
中国政府の検閲官は、ハリウッドが自分たちの仕事を代わりにやってくれているので、一言も言う必要がありません。これは中国共産党のための大規模な宣伝工作です。映画業界が中国共産党に服従しているという話はおなじみのものです。この20年で、中国は世界最大の興行収入として浮上しました。中国共産党は、WTO義務に違反して中国が課した米国映画に対する割り当てと、厳しい検閲体制の両方によって、その儲かる市場に対するアクセスを長い間しっかりと管理してきました。次第にハリウッドは、融資のために中国マネーにも依存するようになっています。
2018年に、中国の投資家を持つ映画は、米国の映画館の興行収入の20パーセントを占めていました。比較として5年前はわずか3パーセントでした。しかし長い目で見れば、他の中国の産業同様に、中国は、ハリウッドを吸収して最終的に自国製の映画製作会社に置き換えることほどは、ハリウッドとの協力に関心が高くないのかもしれません。これを達成するため、中国共産党はいつものやり方に従ってきました。米国映画に割り当てを課し、中国共産党はハリウッド映画制作会社に中国企業とのジョイントベンチャーを結成するよう圧力を掛けて、その後中国企業が米国の技術とノウハウを獲得するのです。
中国のある映画業界幹部が最近こう述べました。「我々が学んだ全て、我々はハリウッドから学んだ」と。特に2019年には、中国で収益トップ10の映画のうち8つは中国で制作されました。ハリウッドだけが中国にこびへつらっているのではありません。米国の大手テクノロジー企業も、あえて中国の影響力の手先となっています。合衆国が中国との貿易関係を正常化させた2000年に、クリントン大統領は新世紀を携帯電話とケーブルモデムによって自由が拡大する世紀として称賛しました。それどころかその後10年のうちに、シスコのような米国企業は、中国の共産主義者がグレート・ファイアウォールという、インターネットの監視と検閲のための世界で最も優れたシステムを構築するのを助けました。
長年、グーグル、マイクロソフト、ヤフー、アップルといった企業は全て、中国共産党と喜んで協力する姿勢を示してきました。例えば、アップルは最近、中国政府が香港民主主義デモの報道に関して不満を表すと、ニュースアプリのQuartzを中国のApp Storeから削除しました。アップルは仮想プライベートネットワークのためのアプリも削除しました。ユーザーがグレート・ファイアウォールを迂回することができたためです。また中国のミュージックストアから民主化寄りの歌を削除しました。その一方で同社は、共産党がメール、SMS、またiCloud上に保管された他のユーザー情報に対してさらに容易にアクセスできるようになるという懸念をよそに、iCloudのデータの一部を中国のサーバーに移すと発表しました。最近我々は、ペンサコーラ海軍航空基地で8人の米国人を銃撃したアルカーイダのテロリストが使用していた2台の携帯電話を調査することができました。犯人との銃撃戦の最中、犯人は立ち止まってぼんやりすると、携帯電話を下に置いて破壊しようとし、2台の携帯電話の1台に弾丸を打ち込みました。そこで我々は、その携帯電話の中にテロ活動に関するとても重要な情報があることを示唆しているのかもしれないと考えました。そして4カ月半の間、我々はアップルから全く助けを受けずに取り組もうとしました。アップルはその携帯電話の調査に何も支援をしなかったのです。
我々は最終的に不測の事態を何とか乗り切ることができましたが、今後そうしたことを繰り返すことはできません。そこで我々は中東でのアルカーイダの工作員との攻撃の前日までのやり取りを発見しました。アップルが中国で携帯電話を売る時、中国のアップルの電話は中国当局による浸透に影響されないと思いますか?中国当局に影響されない状態であれば、販売されることはないのです。そして我々が求められたことは、裁判所の令状を持っている場合に、その携帯電話を調査できるようにするべきだということです。それは米国のテクノロジー企業の間で発生してきたダブルスタンダードなのです。
中国共産党は長い間、公然の報復の脅しを使用し、影響力を行使するために市場アクセスを妨げてきました。ところがもっと最近では、中国共産党は、米国企業の幹部を自分たちの政治上の目的を促進するように育成し強制しようという水面下の取り組みも強化させています。公の目からほとんど隠れているためにいっそう悪質な取り組みです。中国政府が世界中で信頼を失う中で、司法省は、中国の高官とその代理人がますます企業幹部に接触し、中国共産党にとって好ましい政策と行動に都合が良いようにするために、彼らを非難するのを確認しています。彼らの目的は様々ですが、その度合いは概して同じです。ビジネスパーソンは中国に経済的な関心を持っており、中国の要求に対する対応次第で、状況は良くも悪くもなるという兆候があります。個人的に米国の企業幹部に、あるいは米国の政治家に、圧力を掛けたり機嫌を取ったりして政策を推進させるのは、重大な脅威を提起するものです。なぜなら米国人の意見の背後に隠れることで、中国政府は影響力キャンペーンを高めることが可能になり、政権に好意的な政策に友好的な特色を持たせることができるからです。こうした米国のビジネスマンの話を聞く立法者や政策立案者は、外国人に対するよりも有権者に対して適切に共感を高めるものです。
そして政治的なプロセスに参加することで、中国はロビー活動が暴露した場合に生じる可能性のある、影響力の取り組みと一般市民に対する責任を回避しています。米国の企業幹部は、自分たちをロビイストだと考えていないかもしれません。例えば、相互利益につながる関係を育成することはコネ(guanxi)の一環だと思うかもしれません。中国でビジネスを行うために必要な影響力のある社会的ネットワークのシステムのことです。しかし、自分がどのように利用され、外国企業や外国政府のための努力が外国代理人登録法(FARA)にどのような関与があるかに対しては用心すべきです。FARAでは発言や行為は禁止されていませんが、外国の主導者の代理人として活動する者は、司法省に登録し、信頼性を評価する場合に聴衆が発言の発端を考慮できるようにすることでその関係と政治的、または同様の活動を公開する義務があります。
米国の企業幹部に集中することで、彼らが中国の影響力工作の唯一のターゲットだと示唆するつもりはありませんが、彼らは現在、米国での中国の影響力工作の主要ターゲットなのです。
中国共産党は、米国の教育・研究機関に対する浸透、検閲、そして吸収にも努めています。例えば、米国の十数の大学が、中国政府が資金を提供する孔子学院を開設しています。孔子学院は、開設する大学に圧力を掛けて中国政府が物議を醸すとみなすテーマに関して話し合わないようにしたり、イベントを中止させるようにしています。大学は互いのために断固とした態度を取り、中国共産党に研究の取り組みに指図させたり、多様な意見を抑え込ませたりすることを拒否し、本音を語りたいと願う職員や学生を支持しなければならず、研究活動の公正さや自由を犠牲にすることが中国共産党の要求をなだめるだけの価値に見合うかどうか考慮しなければなりません。
グローバル化された世界で、米国の企業と大学は等しく自分たちを米国の機関というよりも地球市民と見なしているかもしれません。しかし、そもそも自分たちが成功できたのは、米国の自由企業制、法の秩序、そして米国の経済的、技術的、軍事的強さによって可能になった安全のおかげだということを思い出すべきです。共産中国のドラムに足並みをそろえる世界は、自由市場、自由貿易、あるいは自由な意見交換に依存する機関にとって居心地の良いものにはなりません。
米国企業がこれを理解していた時代がありましたし、彼らは自分を米国人とみなし、米国の価値観を誇りをもって守りました。例えば第二次世界大戦で、米国の象徴的な企業であるディズニーは政府のための広報映画を何十本も制作しました。米国の水兵に航海術について教育するための訓練ビデオもその1つでした。戦争中、ディズニーの従業員の90パーセント以上が訓練と広報の映画製作に専念していました。米兵の士気を高めるために、ディズニーは米国の兵士と同盟国部隊が使用する航空機、トラック、フライトジャケット、そして他の軍装備品に表示される記章もデザインしました。ウォルト・ディズニーは、自分の創設した会社が現在、外国の独裁政権と取引する状況を見たら落胆するだろうと思います。ディズニーがダライ・ラマに対する中国の弾圧に関する1997年の映画、「クンドゥン」を制作した時、中国共産党はプロジェクトに反対し断念するようディズニーに圧力を掛けました。最終的にディズニーは、合衆国で映画を配給するかどうかを外国の勢力に指図させることはできないと決断しました。しかし、その勇気ある瞬間は長続きしません。中国共産党が中国でディズニー映画を全て禁止した後、同社は復帰のために懸命にロビー活動を行ってCEOは「クンドゥン」のことを謝罪し、愚かな過ちだと述べたのです。ディズニーはそれから、中国の機嫌を取って上海に55億ドルのテーマパークをオープンさせました。その取引の一環として、ディズニーは中国政府高官にその管理の役割を与えることに合意しました。テーマパークの1万1千人の常勤従業員のうち、300人は共産党の常勤党員であり、報道によると、ハンマーと鎌の記章を自分たちのデスクに飾り、就業時間中に施設で党の講義を受けています。米国の他の企業のように、ディズニーは最終的に、妥協して基本理念を曲げることの代償を身をもって知ることになるかもしれません。
ディズニーが上海にパークを開園してからしばらくすると、数百マイル離れた場所に、ニュース報道によると白雪姫や他のディズニーのトレードマークに不気味なまでに似たキャラクターを呼びものにする、中国人の経営するテーマパークが出現しました。米国企業は利害関係をよくわきまえなければなりません。我々が次の四半期の売上報告に焦点を当てがちであるのに対して、中国共産党は数十年、数世紀という単位で思考しています。しかし、ディズニーや他の米国企業が中国政府に屈し続ければ、自分たちの繁栄を可能にした伝統的な自由主義の秩序だけでなく、自分自身の未来と繁栄の両方を損なう危険を冒すことになります。冷戦中、ルイス・パウエル―その後のパウエル判事―は、米国商工会議所に重要なメモを送りました。
彼は、自由企業制が前代未聞の攻撃を受けていると指摘し、米国企業にそれを維持するためにもっと努力するよう強く呼び掛けたのです。「時は来ました。実に、米国企業の知恵、創意工夫、そして資金を、それを破壊しようとする者に対抗して集結させるべき期限はとっくに過ぎています」と彼は述べました。現在も全くその通りです。米国民は、中国共産党がもたらす脅威に対してかつてないほど敏感になっています。その脅威とは我々の生活様式に対するものだけでなく、生活と生計そのものに対するものであり、彼らはますます企業の宥和を非難するでしょう。個々の会社が態度を明確にすることを恐れているなら、数の上での優位性があります。パウエル判事が述べたように、「力は組織にあり、入念な長期計画と実行にあり、無期限に一貫した行動を取ることにあり、共同の努力によってのみ可能な規模の資金にあり、団結した行動と全国的な組織によってのみ可能な政治的な力にあります」。
中国の共産主義当局に長年おとなしく従ってきたにもかかわらず、米国のテクノロジー企業は、ついに共同行動によって勇気を見いだそうとしているのかもしれません。香港で中国の過酷な国家安全法が最近強制されたことを受けて、フェイスブック、グーグル、ツイッター、ズーム、リンクドインといった多くの大手テクノロジー企業は、報道によれば、ユーザーデーターに対する政府の要求に従うことを一時的に停止すると発表しました。例のごとく、共産主義当局者は非従順な企業従業員を投獄すると脅しました。こうした企業が断固とした態度を取るかどうか、またどれくらいの期間そうした態度を取るのかがやがて分かるでしょう。断固とした態度を期待しています。
彼らが団結するなら、中国共産党の腐敗した独裁的な支配に抵抗する他の米国企業に立派な模範を示すことになります。中国共産党は、我々の機関のオープン性を利用してそれらを破壊するために、中国の政府と社会の多くの触手を全て使って画策したキャンペーンを始動しています。自由と繁栄の世界を子供と孫のために確保するために、自由世界には自由世界なりの社会全体のアプローチが必要となるでしょう。その中では官民の部門が区別を維持しても、支配に抵抗して、世界経済の管制高地を賭けた争いに勝利するためにお互いに協力し合います。米国はこれまでにそれを行ったことがあります。そして我々が国とお互いに対する愛と献身をもう一度呼び覚ますなら、我々米国国民、米国政府、そして米国企業は共にもう一度実行できると私は確信しています。我々の自由はそれにかかっています。どうもありがとうございました。