<引用元:ワシントン・エグザミナー 2019.8.15>バイロン・ヨーク氏による論説
ニューヨーク・タイムズのディーン・バケット編集長は最近、モラー報告書の後、同紙がトランプ=ロシア問題から大統領の人種差別問題に、報道の主眼を転換する必要があると述べた。
「我々は1つのストーリーを報道するために編集室を築き上げ、実にうまく行った。今我々は別のストーリーに取り組むために、再編成し、資源と重点を転換しなければならない」とバケットは話した。
バケットのコメントは12日の従業員向け集会でのものだった。録音がSlateにリークされ、15日にその書き起こしが報じられた。
トランプ政権の初期に、NYタイムズ紙はロシア問題の報道態勢を強めたとバケットは説明した。「編集室のためだけでなく、率直に言って読者のためのドナルド・トランプ報道の第1章は、『ドナルド・トランプはロシアと厄介な関係にあり、司法妨害があったのか?』だった。ところでそれは、全く硬派な記事だったし、それを忘れないようにしよう。我々はいつでもその記事を報道する態勢にあった。その報道でピューリッツァー賞を2つ獲得した。また誰よりもうまく報道したと思う」
だがその後モラー報告書が出たが、特別検察官はトランプ陣営が2016年大統領選挙に影響を与えるために、ロシアと共謀や連携を行ったことを立証できなかった。「ボブ・モラーがあの証人席を立ち去った日、2つのことが起こった」とバケットは続けた。「ドナルド・トランプの退場を願っている読者たちは突然、『何てことだ!ボブ・モラーはそうするつもりがないのだ』と思った。そしてドナルド・トランプは政治的に少しつけあがった、と私は思う。その理由は明白だろう。そしてストーリーは変わったのだと思う。我々が今話している事の多くは、6,7週間前ぐらいに出始めていた。我々は少しばかり油断していた。つまりそれは、あるストーリーが2年間ある方向を示している場合に起こることだ。そうだろう?」
バケットは最大限に穏やかな言葉――「ストーリーが変わった」――を使用したが、実際のところ、タイムズが追及に心血を注いできた共謀疑惑は間違いだったと判明した。さらに、連邦議会の民主党は必至で大統領に対する司法妨害を追及しようとした。トランプ=ロシアの落とし穴は実を結ばなかった。
今度は、「我々は変われなければならないと思う」とバケットは続けた。同紙は「国、人種、また他の分裂についてもっと掘り下げて書かなければならない」のだと。
バケットはこう話した。「今後2年の報道のビジョンは、以前話していたことだ。つまり、こうしたコメントをする男をどうやって報道するか?彼の政策を報じ続けながらどうやってそれを行うか?ドナルドトランプによって大きく分裂した米国をどう報道するか?ということだ」
集会は、反トランプの度合いが不十分だとして多くの左派が責めたてた見出しに対する、同紙の内外からの怒りの声によって促進された。エルパソ銃乱射事件の後、大統領が白人至上主義を非難した際、同紙は「トランプ、対人種差別の団結を促す(Trump Urges Unity Vs. Racism)」という見出しで1ページの記事を出した。
ある社員はバケットにこう話した「このような見出しを人々が大きく問題視する理由の1つは・・・非常に心配しているからだと思う。そして彼らはニューヨーク・タイムズを頼りにしている。ドアを蹴飛ばして通り抜けるために、我々に頼っているのだ。なぜならそれを今すぐに必要としているからだ。今はとても恐ろしい時代だ」
バケットは今後2年の同紙の新しい「ビジョン」への転換を誓った。「みなさんが話していること全部に我々はどうやって取り組むのか?」と彼は社員に話した。「人種に関して思慮に富んだ形でどう書くのか?それは長い間我々が大々的には行ってこなかったことだ。それが、私にとっては、報道のビジョンだ。みなさんはそのビジョンを形成するのを手助けして欲しい。それは、今後残された2年間に我々がやらなければならないことだと思う」
見出しの論争は、新たな2019-2020のニューヨーク・タイムズのプレビューだったようだ。バケットが最後までやり抜くなら、同紙は今後2年の、図らずもちょうど2020年大統領選挙までの期間、「トランプは人種差別主義者」という筋書きを作り上げるために費やすだろう。(バケットは、ほとんど後付けのようにして、同紙が「大統領の政策を報じ続ける」とも述べた。)
従業員向け集会は公開を意図したものではなかった。だが同紙は報道機関であり、その録音がリークされたことに驚く人はいないだろう。おそらくはバケットにさらなる反トランプの方向性を強く求めたいと考える、同紙の従業員がやったことだろう。いずれにしてももう公開されている。そして結果は今後2年間に展開されるだろう。