<引用元:FOXニュース 2018.3.2>
ケイシー・ハンセンさんは銃が嫌いだった。
彼女はソルトレイクシティ地域の特別教育の教師だ。銃のない家庭で育ち、一度も狩猟に行ったことはなかった。彼女は学校で銃が必要だとは全く考えていなかった。
ハンセンさんはFOXニュースにこう話した。「正直言って私は銃が怖かったです。ただでたらめに飛んで行く、危険な物だと思っていたのです」
しかし2012年12月のコネチカット州のサンディーフックで、20名の生徒と6名の職員が死亡した大量殺りく事件をきっかけに、彼女の考えは変わった。
「授業中も、自分の学校で銃撃が起こるのではと考えずにはいられませんでした」とハンセンさんは話した。「でも、教室の中に隠れて銃撃犯に見つからないように祈る事が良い考えだとは思えませんでした。ですから私は、銃の携帯許可証(訳注:外から見えないように銃を隠して携帯する許可)を取得するための講習を受けようと決意しました」
サンディ―フック事件は全国の学校の教師や職員に影響を与え、教育者が武装するという考えをめぐって全国的な議論に拍車がかかった。その議論が再燃したのは、フロリダで19歳のニコラス・クルスが自身の出身高校で、AR-15ライフルを使って17名を殺害してから数週間後の事だった。
匿名希望のある国語教師は次のように話した。「こういった銃撃事件が起こると多数の犠牲者が出ますが、この銃撃犯たちは人が多く死ぬほどうまく行ったと思うのです。しかし、私たちには犯人を止めることができます。また1人だけでも生徒の命を救うことができるのであれば、銃を持つ価値はあると思います」
銃の権利の支持者の話では、サンディ―フックの殺りく以来、学校で武装することに関心を持つ教師個人や学区の数が急激に増え、関心のある希望者の要望に応えるため、順番待ちになっているプログラムもあるそうだ。だが、銃の携帯許可証を持つ教師が実際に学校で武器を携帯できるかどうかは、勤めている地域の州によって大きく異なってくる。
学校の中で武器の携帯を許可しているの州はおよそ10ある。例えばユタ州では、州の法律によってハンセンさんは銃を携帯することができる。たとえ彼女の学校が公式には認めていなくても、だ。
また、大多数の州では学校の施設で銃を携帯することが法律で禁止されているのだが、オハイオ州やミズーリ州のような少数ながら限定された州では、州法より学区の判断を優先させて職員が銃を携帯することが許可されている。
ミズーリ州のフェアビューR11学区の責任者であるアーロン・シドー氏は、FOXニュースに対してこう話した。「専任のリソース・オフィサー(訳注:学校での警備と犯罪防止専任の警察官・School resource officer)を置くといった他の選択肢も検討しました。我々はこのプログラムを実行することに決め、現在はそれに大変満足し支持しています」
銃の権利の支持者は、銃を持った教師は学校銃撃犯に対する抑止となるだけでなく、生徒を守る上での防御の最前線となるのだと主張している。
バックアイ銃器協会の理事であるディーン・リエック氏はFOXニュースに次のように述べた。「一般の人は我々が学校の出口に立って銃をばらまいていると思っています。しかし、我々は教師を警察官に変えようとしているのではありません。専門家が到着する前に命を救うための、道具を提供しようとしているのです」
リエック氏と他の銃支持者は、教師が受ける訓練はほとんどの地元の警察の訓練を上回るものだと指摘した。訓練には基本的な銃の技能と射撃訓練だけでなく、銃による傷を止血する方法から、型にはまらない射撃姿勢やSWAT部隊の機動演習に至るまでの内容が含まれている。
学区によって異なるが、教師は40時間から150時間の訓練を受けた後、校内で銃を携帯できるようになる。また90パーセントの正確さで標的を撃つことができなければならない。ほとんどの地元の警察では70パーセントの正確さしか要求されていない。
オハイオ州の国語教師はこう話した。「我々の行っている訓練と習得した内容の程度が分かれば、教師を武装させるということについて考えが変わると思います」
またそのプログラムをさらに質の高いものにするために、教師は精神科医のメンタルヘルステストを受けなければならず、予め銃の携帯許可証を所持しており、抜き打ちの薬物検査に合格しなければならない。
シドー氏は次のように述べた。「教師は問題に対処する方法と力を使う方法が分かっていなければなりません。たとえ究極的な目標が、学校で誰もそれを使用する必要がないようにする事であっても、です」
学校で銃を携帯するという事については、様々な団体が反対している。その多くは教職員組合と警察関係の団体であり、彼らは学校で銃を増やしても、こういった銃撃事件を防ぐことにはならないと主張している。
Educator’s School Safety Network(教育者による学校安全ネットワーク)のプログラム・ディレクターであるアミー・クリンガー氏は、FOXニュースに次のように述べた。「教師が脅威を無力化できるという考えを裏付けるだけの十分な根拠はありません。どういうわけで、警察が苦労しているような事を、社会科の教師が行えると考えることができるのでしょうか?」
ニューヨーク市警察署長のジェームズ・オニール氏は、教師を武装させることに反対の意見を持つ、最も注目を集める警察官の1人だ。先週行われた記者会見ではその提案を「良い考えではない」と述べた。
ニューヨーク・ポストによると、オニール氏は次のように述べたという。「教師には生徒を教えさせましょう。銃を持つというのは大きな責任です。銃の安全防護の問題があり、訓練の問題があります。これは警察が行うことです。ニューヨーク市の子供を守る事は警察に任せるべきなのです」
クリンガー氏はオニール氏のコメントを支持し、学校が教師に銃を持たせると決定する前に、取り組むべき安全の問題が他にあるのだと付け加えた。
クリンガー氏が提案した改善案の中には、学校でメンタルヘルス活動を向上させる事と、脅威をもたらす可能性のある生徒を特定する仕組みの実施、校内の建物と環境での安全性の向上、そして登下校の手順の変更といったものがあった。
銃の携帯を許可している学区の教師と学校職員は、他にも問題があるという点ではクリンガー氏の意見に反対ではない。けれども、教師を武装させれば即座に効果を発揮できると言っている。– 特に他の方策がうまく行かない時には。
「銃というのはこれに対する20の異なる解決策のうちの1つの側面に過ぎません。私たちは銃撃事件が起きる前に初期の段階で問題を阻止したいのです」と、ハンセンさんは話した。
「ところがフロリダで起きた事を見てください。犯人にその能力があって、学校に入って来て罪のない人の命を奪うことができる事を誰もが分かっていました」
※動画では、FOXニュース司会者が、事件が起きたときに教師が銃を持っていると警察が犯人と混同する恐れがあるという懸念について、ハンセンさんに質問している。その場合「銃を持っている!」と大声で叫ぶようにするので、警察が銃を置くように指示すればそれに従うのだと彼女は説明している。