米フロリダ州の高校で14日に起きた悲惨な銃乱射事件後、ドナルド・トランプ大統領は、身元調査の徹底や年齢制限の引き上げなどに前向きな姿勢を示す一方で、いわゆる「アサルトウェポン」禁止には否定的であり、抑止力として教師を含む学校関係者が武装することを提案している。
アサルトウェポンとは戦闘で兵士が使用するような、自動または半自動の殺傷能力の高い大型の銃のことを言うことが多い。
今回の事件では、AR-15という半自動ライフルが使用された。そこでこの種のライフルを禁止すべきだという声が銃規制支持派の中で上がっている。
だが、そもそもAR-15はアサルトウェポンやアサルトライフルに分類されるものではないという主張も存在する。AR-15は軍用銃のM-16に外観が似せてあるために危険な印象を与えているだけで、機能としては半自動のライフルでしかないというものだ。
自動と半自動の違いを簡単に説明すると、自動タイプは引き金を引いている間、弾丸が連続して発射され続ける。これに対して半自動は、引き金を1回引くたびに1発の弾丸が発射され、薬きょうの排出と次弾の装填のみが自動で行われる。
さらには、手動タイプの銃でもその種類や訓練によっては半自動タイプの銃並みに連射できるという主張もある。
保守派のYouTube番組司会者であるスティーブン・クラウダ―氏は、動画の中でレバーアクションタイプのライフルを連射している映像を示し、一部の銃だけを規制しても無意味だと主張している。
アサルトウェポンの禁止が、必ずし犯罪防止に効果があるとは言えないことを示す実例もある。
デイリー・シグナルの記事によると、殺人事件では、拳銃が使用されるケースがライフルやショットガンの約9倍であり、命に関わらない犯罪でも拳銃が8倍使用されているというのだ。
また1994年から2004年まで、実際にアサルトウェポンが禁止されたこともあった。上の記事では、UCLAロースクールの憲法学教授、アダム・ウィンクラー氏が2015年にロサンゼルス・タイムズに寄稿した論説を引用している。アサルトライフル禁止によって銃犯罪や銃による死亡者は減少しなかったことが、2004年の司法省による調査結果で判明したのだという。
一方ワシントン・ポストが取り上げているように、アサルトライフル禁止は大量殺人事件の減少には効果があったし、それが目的であったのだと主張する研究もある。だが、殺人や犯罪が全体として減らないとすれば何の意味があるのだろうか?
また、銃乱射事件では必ずしもAR-15などのアサルトライフルが使用されるわけではなく、半自動の拳銃が使用される場合もある。
乱射事件を防ぐという意味では、もう一つの観点がある。それは学校に代表される銃の持ち込み禁止区域の問題だ。
コンサバティブ・トリビューンの記事では、1950年から2016年6月10日までに起きた銃乱射事件のうち、98パーセントが銃の持ち込み禁止区域であったという Crime Prevention Research Centerの調査結果を紹介している。
また、警察官の81パーセントは教師が武装することを支持している。トランプ大統領の提案は闇雲なものではないのだ。
1999年のコロンバイン高校銃乱射事件の生存者である、パトリック・ネビル氏も銃の持ち込み禁止区域に反対する一人だ。同氏は現在、コロラド州下院少数派議長であり、学校での銃使用制限の撤廃を求め続けている。
フロリダ銃乱射事件犠牲者の父親ポラック氏の言葉を紹介したが、彼の意見も「子供たちを守る」ことを主眼に置いて欲しいというものであり、空港や他の公共施設が警備されているように学校を保護すべきだと示唆するものだった。
今回の事件では現場に到着していた保安官補が、銃声を耳にしながら中に踏み込まなかったことが判明した。銃の規制だけすればすべて解決するという単純な問題では片付きそうにない。