<引用元:ザ・ヒル 2019.5.7>元FBI特別捜査官ケビン・R・ブロック氏による寄稿
ジェームズ・コミーの惑星は目に見えて温暖化が進んでいる。ウィリアム・バーの排出物が原因として疑われる。
バーは、コミーがFBI長官として、どのように、またなぜ、2つの大統領選挙陣営を捜査すべきだと判断したのか、またその中で規則や法律が破られていなかったかを入念に調べるつもりであることを明言した。
この観点からして、クビになったFBI前長官は、高い木に囲まれて、また人影のない田舎の道の真ん中で立っている自分の抽象的で芝居がかったツイッター上の写真が、もはや戦略として十分ではないと判断したようだ。
いや、無慈悲な司法長官が仕掛けた話に、多分もう手遅れだが、もっと直接的に反論を試みなければならないことにコミーは気づいたのだ。司法長官の言葉は、先週の上院司法委員会の前で、リンダ・ブレアにかけられた聖水のようにトランプに反対する世界に着弾した。それ以来、金切り声を上げる首の回転は止まらない。
最近コミーは本当に忙しくなっているのが分かる。まず彼は、ニューヨーク・タイムズで好奇心をそそる論説を執筆した。その後、コミーが過去に協力したことのあるタイムズの記者が、トランプ陣営に対する議論の分かれる初期の捜査技法を暴露する記事を書き、率直に言い訳をしようと試みた。次にコミーは、友好的なケーブルニュースの「タウンホール番組」の出演を予定している。
論説の中でコミーは、今では彼のおなじみとなった聖ヤコブのギャグを持ち出し、他人の倫理性について遠慮なく意見を述べた。彼は自分をビーズのロザリオを動かす、「ポトマックの教皇」のようにみなしているが、ボールベアリングを動かす、破綻をきたしたクイーグ艦長という印象のほうが強い。
コミーは大統領には「道徳心がない」と宣告した。彼は、司法長官は「侮りがたい」が――明らかに推測できることとして――コミー自身と違って「精神力が欠けている」と断言した。斧を振るう直前の執行人を侮辱するという戦略は、奇妙なものだが、コミーには奇妙な決断と疑問の余地のある判断をしてきた長い経歴がある。
「道徳心のない指導者(大統領を指す)は、ある方法で周辺の人たちの性格を暴露する」と、コミーは皮肉や自己認識をほのめかすことなく書いた。FBI前長官が周辺に集めた人たちは、その男に会ったことをおそらく後悔している。大部分は現在、コミーが自身の判断を前進させるために容易に操れると踏んだとんでもない行為のために、クビになったり信用を失ったりしている。
それから念のためだが、コミーの論説は極めて奇妙な代物であり、大統領が「少し噛んで魂を食べる」ことを思い描いていた。では少しの間一歩離れてみるとしよう。ジェームズ・コミーは苦境に立たされているようだ。彼の奇妙で自暴自棄な話と行動は、緊張感と不安をさらけ出している。ある面見るに堪えない。
コミーはFBIで自分がやったことは全て規則通りだったと主張するだろう。だが、司法省のマイケル・ホロウィッツ監察長官と米国連邦検察官のジョン・ヒューバーの捜査が、バーの約束した検証と共に完了した後に、FBIと法的手続きに関するコミーの誤った対応が完全に明らかになるだろう。
理想として、バーの検証は3つの主要な流れに対する情報を集約するだろう。
1番目は、両大統領候補者とトランプ陣営に対する捜査が適切に、バーの言葉では、「断定された」かどうかということだ。これはつまり、FBIの既存のガイドラインの下で、FBIがそもそも捜査を開始するだけの正当な理由が十分にあったかどうかを検証するということだ。
モラー報告書の結論から、これがトランプ陣営に対する防諜捜査に対するもっともな疑問だと言える。コミー自身がクリントンのメール事件は起訴できないと表明したことからは、それがその捜査に対するもっともな疑問だと言える。
2番目は、コミーのチームが捜査中に、長い伝統のある捜査ガイドラインに従ったかどうか、また具体的には、米国市民に対する電子的監視を合法的に実施するのに十分で真実の理由があったのかということだ。
3番目は、前政権のホワイトハウスとその国家情報長官、CIA長官、そして司法長官から出てくる政治的意図の影響を過度に受けたかどうかについての検証だろう。これが何にもまして、360度の首の回転を引き起こしているものだ。
3つのシナリオ全てで厄介な行動があったことを早期に示すものがある。バーはある特定の関心の領域に焦点を絞りたいだろう。FBIが利用した秘密の情報提供者のことであり、それが独自のものか、それとも当時のCIA長官が用意したものかということだ。
FBIの防諜捜査は一般に、予備捜査(PI)とよばれるものから本捜査(FI)へと順次進むということを理解するのが重要だ。PIからFIに移行するには、捜査対象が外国の勢力の代理人として行動したことを示す十分な情報――断定――が要求される。
モラーの調査結果から見ると、これはコミーにとって問題だ。FBIが米国市民に対して情報収集するために秘密の情報提供者や政府の秘密捜査員に任務を与える場合、厳格なガイドラインの制約を受ける。通常これは本捜査に限定されており、通常は国外ではなく米国内に制限されている。
コミーのチームは然るべき確認をせず、適切な断定がなく、また公式に捜査が開始される前に情報提供者に任務を課していたのではないかという気がする。バーは事件簿を引っ張り出してこれに専念すべきだ。
その上、トランプ陣営に対してFBIが利用した人物の配役は全員が、元々CIAの情報源(機関の言葉では「アセット」)だったようであり、時折FBIにも共有されていた。ステファン・ハルパーとおそらくジョセフ・ミフスドから、クリストファー・スティール、カーター・ページ自身、そして今ニューヨーク・タイムズの記事に出たハルパーのアシスタントを装っていた謎の「政府捜査官」に至るまで、コミーはFBIの防諜捜査というよりも、CIAの政治的な作戦の促進のために操られていたのではという点について、当然の疑問が沸き起こる。
メディアの中には、タイムズの記事は、FBIが初期の秘密の情報提供者の利用を正当化しようと試みているものだと示唆する向きもある。だが現在のFBI長官、クリストファー・レイは、コミーの時代に大きくなったガンを切除したいという気持ちを示した。現在のFBI幹部が過去の不正行為を正当化しようとしているとは考えにくい。
ジェームズ・コミーが危惧を抱くのは当然だ。彼自身がFBIの魂を食いつぶした。少しではなく危険なほど大きく噛みついて。だがそれは1人分の料理だったのであり、彼の行動は本物のFBIを示すものではない。司法長官の総合的な検証を歓迎するし、誠実に公平に行われるなら、両党の将来の大統領候補者を守ることになるだろうし、FBIの尊敬できる魂を取り戻すことになるだろう。
FBIの元情報副部長であるケビン・R・ブロックは、FBI特別捜査官を24年間務め、国家テロ対策センター(NCTC)の副所長も務めた。