<引用元:ワシントン・エグザミナー 2019.4.6>
誇大宣伝は相変わらずだ。ドナルド・トランプ大統領によると、米中が最終的に貿易協定に合意すれば、それはあらゆるディールの中で「最も優れたもの」となり、「画期的な」合意となるということだ。
だが大統領が4日の中国副首相との会談に先立って話す中で、最高のディールメーカーは戦術の転換を示唆した。
「ディールができれば我々は首脳会談を行う。ディールができなければ首脳会談は行わない」と大統領は話した。
大統領の言葉はこれまでの交渉とは対照的だ。これまでは、首脳会談前ではなくその最中に合意を結ぶことを意図した個人外交を多用するという特徴があった。
2月にトランプは、ディールのないままベトナムでの北朝鮮の金正恩との会談に背を向けた。バンダービルト大学の大統領外交専門家であるティゾック・チャベスは、金委員長との2度目の首脳会談の失敗が再考を促したのだと述べた。
「彼(大統領)は自身の説得の能力に実に大きな自信を持っている。1度目の金正恩との首脳会談前には、自身の手際とセンスがいかに重要な役割を果たすかという話をしていた。もしかすると今、全てを自分の責任で話すよりも、外交官と高官を信頼して土台を築かせるようとするように変化したのかもしれない」とチャベスは話した。
トランプ政権で中国との対話を主導するロバート・ライトハイザーは、「大きな、大きな課題」が残っていると述べた。交渉は5日で3日目となっており、次週はテレビ会議システムで継続することになっている。
米国は中国に米国製品の購入の約束と、知的財産権の保護強化、そして2国間の貿易バランスの改善を行うよう求めている。
トランプはいかなるディールも4週間のうちに可能だと述べた。
高官は当初、首脳会談は3月末より前に可能だと示唆していた。ところが協議に詳しい人物によると、ディール前に何か発表すれば、譲歩を引き出すチャンスが減り、米国の影響力を弱める可能性があるという懸念が生じたのだという。
それは、The Art of the Deal(邦題:「トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ」)の著者にとって新たな方針だと言える。大統領候補の時は頻繁に、自身のビジネス感覚を政治の世界で活用するのだと盛んに話していた。
「ディールというのは私にとっての芸術形式だ。絵を美しく描く人もいるし、詩を書く人もいる。私はディールを行うのが好きだ。大きなディールほどいい。それが私にとっては楽しみだ」とトランプは大統領出馬の発表直前に語っていた。
アメリカ・ファースト・ポリシーの主席政策アドバイザーで、トランプ政権移行チームのメンバーも務めたカーティス・エリスは、大統領が独力で交渉の全ての負担を引き受ける必要はないと述べた。
その代わり、トランプは強硬措置を中心にコンセンサスを形成して、米国経済の中国からの分離を推進した。単なるディールではなく、正しいディールを結ぶための時間をさらに勝ち取っているのだ。
「企業とそのリーダーは中国を脅威と見なすように態度を変えている。彼らは現在、トランプ大統領の中国との対決姿勢に前向きだ。関税に前向きなのだ」とエリスは話した。
「トランプ大統領の政策が正しいものだというコンセンサスが、今高まっている。だから、国際的な市場とインフラ開発での中国の拡大に、我々は対抗する必要があるということが更に明白になる中で、『迅速なディール』を求める圧力は消えつつある」
※「高官は当初、首脳会談は3月末より前に可能だと示唆していた。」の部分が「高官は当初、首脳会談は5月末より前に可能だと示唆していた。」と誤っておりましたので修正しました。問い合わせフォームからのご指摘ありがとうございました。