<引用元:ナショナル・レビュー 2018.9.15>アンドリュー・C・マッカーシー氏による論説
FISA黒塗りの開示?すでに公開されていることを心配すべきだ
(前略)
「犯罪が行われたかどうか評価するために」防諜を利用
FISA申請でこのような気まぐれなアプローチが見つかっただけではないということは、注目に値する。当時のFBI長官、ジェームズ・コミーが2017年3月20日に下院情報委員会で行った息詰まる証言で、そのことが声に出して語られている。(イタリックは著者)
「私は次の点を司法省の承認の上確認します。FBIは、防諜任務の一環として、2016年の大統領選挙に対するロシア政府の干渉の取り組みを捜査しており、それにはトランプ陣営の関係者とロシア政府との間のあらゆるつながりの性質と、陣営とロシアの取り組みの間に提携があったかどうかを捜査することが含まれます。あらゆる防諜捜査と同様に、これには犯罪が行われたかどうかについての評価も含まれます」
捜査の存在を確認することと、告訴されていない人物や団体(「トランプ陣営の関係者」)を容疑者として認定することが司法省とFBIの手順に反することは置いておこう。全ての防諜捜査に「犯罪が行われたかどうかについての評価」が含まれるというのは事実ではない。ほとんどの防諜捜査では犯罪に関心がない。それを言うならどんな捜査でも、捜査官が探していない犯罪の証拠がたまたま発見された場合、そこから起訴のために送致すべきがどうかの評価が行われるのだ。この評価は手続きに本来組み込まれたものではない。というのもそれが特別の状況であるためであり、FISAの目的は本来刑事事件を立件することではないからだ。そのため刑事事件にFISAの証拠が含まれることは非常に少ない。
コミー長官の証言は、「検察機関」を介入させることについてFISA令状で訴えている内容そのものだ。またコミーの証言は明らかにローゼンスタインによるモラーの任命に組み込まれていた。特別カウンセルにはロシアに対する防諜捜査任務が与えられた。その捜査自体は本物だが、モラーへの任務割り当てはカモフラージュだ。というのも防諜捜査には検察官は必要ないからだ。モラーにとってロシア防諜捜査は、犯罪が起きたと考える根拠が不在のままトランプに対する犯罪捜査を実施するための偽装だ。
壁:口実としてのFISA乱用の防止
(中略)
FISAがこのように犯罪捜査を実施するための口実として利用される恐れに基づき、クリントン政権司法省は「壁」を定めた。捜査官が犯罪捜査を進める上でFISAを悪用するのを防ぐために、FBIの防諜捜査官の側と、犯罪捜査官と検察官の側の間に障壁が定められた。双方が協力し情報共有することは実質的に不可能になった。
その結果の1つとして、予期されたようにFISAが乱用される可能性を取り締まることができた。だがその治療薬は病気よりも悪いものだということが分かった。防諜捜査官と犯罪捜査官が諜報のモザイク画を作り上げることができず、左手は右手のやっていることがもう分からなくなってしまった。このためにテロリストは捜査を逃れることができた。否応なく9・11のような大惨事が起こることになる。
9・11後、壁は取り壊された。小生のような経験豊富な人々がそれを取り払うことを支持していた。我々は、FBIが犯罪捜査を行うためにFISAを口実として利用すると考えるのは馬鹿げていると主張した。たとえ不正な捜査官がいたと仮定しても、その不正行為者がFISAを利用できるように国家安全保障の切り口をでっち上げるよりも、犯罪捜査の盗聴に必要な証拠をでっち上げる方がはるかに容易だろうと私は何度も断定した。不正行為者がFISAの手段を取ろうとしても、決してただでは済まされないだろうと私は主張した。FISAにはFBIと司法省の上層部―不正行為者をその場で阻止する信頼できる上長たち―においてあまりにも多くの段階の調査が必要とされる。
だが私は間違っていた。
私が考慮に入れなかったことは、政治的な理由からFBIと司法省の上層部が自ら捜査を実施する可能性だった。それは行われるべきではなかった。監督者は現場の捜査から分離された、冷静な頭の持ち主であるべきだ。彼らは指針通りに実行させ、乱用を防ぐためにいるのであり、捜査の秩序を保つためであってそれを実施するためではないのだ。
だがトランプに対する捜査では、本部が捜査官となった。また捜査官がやるべきでないことをしている時に上司に秘密にしておきたいという気になるのとちょうど同じように、オバマ政権の司法省とFIBはトランプ捜査についての情報を議会に伏せていた。しかも「ギャング・オブ・エイト(訳注:上下院、両党の情報委員会幹部)」は機密事項について年4回の説明を受けることになっていたのに、だ。彼らは情報源(クリントン陣営)について、また重要証人(クリストファー・スティール)の明白な不誠実さと根深い偏向について、不可欠な情報をFISA裁判所に伏せていた。そればかりかFBIの指針を無視してFISA裁判所に未検証の疑惑を提出していたのだ。本部は、時折事件に入れ込み過ぎる捜査官がそのような手抜きをするのを防ぐために存在している。だがここでは本部がそれ自体の上司であった。そのような取り決めがうまく終わることは少ない。
彼らはいつもそうしているのか、それともトランプ捜査の時だけのことなのか?
情報共有を促進してテロリストの攻撃を防ぐために壁は取り払われた。それでも根本的なルールも変わったわけではない。犯罪が行われた、または行われつつあると考えられる事実に基づく根拠を捜査官が持っているなら、FBIは犯罪捜査に着手し犯罪に対する権限を使用する。そうでなく捜査の主要目的が外国の諜報である場合、FBIは防諜捜査に着手してFISAを使用する場合がある。犯罪が行われたと考えられる事実に基づく根拠がないのに、犯罪捜査実施のためにFISAを口実として利用するのはやはり不正である。確かに捜査官が誠実なFISA捜査を行っていて偶然犯罪の証拠を見つけた場合、それを無視する必要はない。だがこの分別あるルールは、犯罪の証拠を暴くことを目的としてFISA捜査を実施するためのライセンスではないのだ。
ところがトランプの捜査で起きたのはそれだ。FBIはもう2年以上も捜査を行っており、そのうち9カ月間はトランプ陣営がロシアとの腐敗した共謀に従事していると、FISA裁判所に明白に伝えていた。しかしそのような凶悪な違反行為で訴えられた人は今まで誰もいない。一方で副司法長官のローゼンスタインは、特別カウンセル(検察官)が任命されるほどに、トランプが有罪であると考えるだけの強い根拠となる犯罪を認定することを拒み続けている。
そのような犯罪があったとしたらもうとっくに明らかになっているだろう。トランプがロシアとスパイ行為の共謀をしていたと疑う「事実に基づく」根拠は、裏付けがなく検証できないスティール文書だった。オバマ政権司法省とFBIはFISA令状を取得するために文書を利用し、それを行う中で裁判所には「検察当局」が犯罪を探す中で「外国の諜報」を「評価」すると伝えていた。
司法省とFBIはFISAを口実として利用することが許されないことは分かっている。私が議会のメンバーであったなら、(カーター)ページの令状申請にあるこの「検察官の」検証の約束が(a)トランプ捜査だけのものであったのか、それとも(b)FBIがFISA令状を求める時にはいつでも行使されるものなのか質問するだろう。
いずれにしても問題だ。いずれにしても国に損害を与える。FISAにあるような国家安全保障の権力が、犯罪捜査を正当化する証拠が不十分な場合に、アメリカ人の監視のために用いられるのだと国民が確信するようになれば、その様な権力を剥奪するように要求が起こるだろう。すると司法省とFBIの上層部による信頼できる監督によって、政府がこれらの権力を乱用することはないと信頼できると長年主張してきた我々は、何も言うことができないだろう。
(強調フォントは当サイトによる)