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FISA乱用メモ全文の日本語訳

投稿日:2018年2月5日

米下院情報委員会が2月2日に公開したいわゆるFISA(外国情報監視法)メモ(覚書)は、米マスコミとソーシャルメディアで大きな話題となった。

主要メディアの報道では、メモ公開はトランプ大統領がロシア疑惑の批判をかわすためだという憶測もある。だがメモの内容が事実だとすれば、FISAの乱用があったという指摘は間違いないだろう。そしてその動機は政治的なものであった可能性が極めて高い。

メモの冒頭は、ホワイトハウスの法律顧問が同委員会向けに宛てた内容で、委員会からの公開要求を大統領が承認した経緯や法的な背景を説明している。「2018年1月18日」から始まる後半がメモの本文であり、同委員会のニューネス委員長がまとめた内容である。

メモの(脚注を除く)ほぼ全文の日本語訳は以下の通りだ(同じ内容の日本語訳PDFファイルはこちら)。

ホワイトハウス
ワシントン

2018年2月2日

20515
アメリカ合衆国 首都
ワシントンDC
下院情報常任特別委員会 委員長
デヴィン・ニューネス殿

親愛なる委員長殿

2018年1月29日、下院情報常任特別委員会(以下、「委員会」という。)は、委員会の監視活動に関連して提供された機密情報を含む覚書を、公式に開示することを決議した(「覚書」はこの文書に添付される)。下院規則第10条第11項(g)で規定されている通り、委員会はこの覚書の公開が公共の利益に適うとの決定に基づき、覚書を大統領に送達した。

憲法は、国家安全保障上の秘密が開示されることを防ぐ権限を大統領に付与している。最高裁判所が認めているように、我々の情報源とその手法、および国防に関する情報を機密指定し、機密指定を解除し、またそれに対するアクセスを統制するのは大統領の責務である。例として、海軍省対イーガン、484 U.S. 518, 527 (1988)を参照。議会による適切な監視を促進するために、行政機関は機密情報を適切な議会委員会に委ねる場合があるが、それは委員会のここでの監視活動に関連して実行された通りである。行政機関は、委員会が責任を持ってそのような機密情報を保護し、アメリカ合衆国の法に合致するという前提の下でその様に行う。

委員会は覚書の公開が適切であると決定した。行政機関は、両党の陣営にまたがって、公共の利益のために特定の資料の機密指定を解除することを求める議会の要請に対応するため、職務を遂行した。しかしながら、立法府の一方的な行動で機密情報を公開することは、極めて稀であり、権力の分立に対する重大な懸念を引き起こす。従って覚書の公開を求める委員会の要請は、大統領の権限に準じた機密指定の解除に対する要求として解釈される。

大統領は、我が国の安全保障が自身の最大の義務に相当するものである、と理解している。よって大統領は、弁護士と国家安全保障担当者に機密指定の解除要求を審査し、機密情報の取り扱いの管理における従来の基準に合致させるように指示した。基準には大統領令13526の3.1項(d)に基づくものが含まれる。それらの基準では、公開による公共の利益が情報保護の必要性を上回る場合に、機密指定の解除が認められる。ホワイトハウスの検証過程には、国家情報長官官房と司法省からの助言も含まれていた。このような検証とこれらの基準に一致して、大統領は覚書の機密指定を解除することは適切であると判断した。

このような審査に基づいて、また覚書の重大な公益性を考慮して、大統領は覚書の機密指定解除を許可した。明確にしておくべきこととして、覚書は作成者である議員の判断を反映したものである。大統領は、覚書に関する問題についての監視が継続する可能性があることを理解している。 このような過程によって機密指定の解除という結果になったという状況は、異例のことであるが、行政機関は監視要求に対応するために、情報源とその手法の保護の必要性を含めて、適切な基準と手順に従って議会に協力する準備がいつでもできている。

敬具

大統領法律顧問
ドナルド・F・マッギャン二世

cc: 下院議会議長
ポール・ライアン殿

下院情報常任特別委員会 少数派上級委員
アダム・シフ殿


 

2018年1月18日

2018年2月2日
大統領命令により機密指定解除

To: 下院情報常任特別委員会 多数派メンバー

From: 下院情報常任特別委員会 多数派スタッフ

Subject: 司法省と連邦捜査局における外国情報監視法の乱用

目的

この覚書は、委員会が継続中である捜査に関する重大な事実について、最新情報をメンバーに提供するものであり、その捜査とは、司法省(DOJ)と連邦捜査局(FBI)が、2016年の大統領選挙中に外国情報監視法(FISA)を利用した件に対するものである。以下に詳述するが、我々の調査結果は、1)DOJとFBIが外国情報監視裁判所(FISC)とやり取りした内容の一部について、正当性と合法性に懸念を抱かせ、2) FISA手続きに関連した乱用から米国市民を保護するために確立された、法的な手続きが破綻するという問題ある状況を示しているのである。

捜査の最新状況

2016年10月21日、DOJとFBIは、(第7編によるものではない)FISA適用に足る相当な理由があるとする命令書を、FISCに請求しそれを受け取り、カーター・ページに対する電子的監視が認められた。ページはトランプの大統領選挙陣営で、ボランティアとして顧問を務めていた市民である。FISAにおける要件と一致して、申請にはまずFBIの長官か副長官の承認が必要であった。それから司法長官、司法副長官(DAG)、または上院の承認した国家安全保障部門の司法次官補の承認が必要であった。

FBIとDOJは、FISCからカーター・ページを対象とする1つ目のFISA令状と3つの更新令状を獲得した。法令(50 U.S.C. §1805(d) (l))によって要求されているように、米国市民に対するFISA命令は90日ごとにFISCによって更新されなければならず、更新の度に個別の相当な理由を示す調査結果が必要とされる。ジェームズ・コミー長官(当時)は、問題の3つのFISA申請にFBIを代表して署名しており、アンドリュー・マッケイブ副長官は1つに署名した。サリー・イエーツDAG(当時)、デイナ・ベンテイDAG代理(当時)、そしてロッド・ローゼンスタインDAGはいずれもDOJを代表して、1つまたはそれ以上のFISA申請に署名した。

外国情報活動の機密を要する性質ゆえに、FISC以前のFISA申請(更新を含めて)は機密扱いとされる。そうであるから、FISA手続きの整合性に対する国民の信頼は、とりわけ米国市民に対する監視に関する場合、裁判所が政府に最高の基準を守らせることができるかどうかに懸かっている。しかしながら、FISCが米国人の権利を厳しく保護することは、90日ごとの監視命令の更新によって増強されているものの、必然的に政府がすべての資料と関連事実を裁判所に提示することに依存している。これにはFISA申請の対象にとって有利なものとなる可能性のある、政府に知られている情報も含まれるだろう。カーター・ページの件で、政府は、正確に関連事実についての説明を提供するために、FISC以前に少なくとも4回の機会があった。しかしながら、我々の調査結果では、以下のように資料と関連情報が省略されていた。

1) クリストファー・スティールが民主党全国委員会(DNC)とヒラリー・クリントンの選挙陣営のためにまとめた「文書」(スティール文書)は、カーター・ページのFISA申請で不可欠な要素を形成していた。スティールは長期にわたるFBIの情報源であり、またドナルド・トランプのロシアとのつながりに関する中傷情報を得るために、法律事務所パーキンス・クーイと調査会社のフュージョンGPSを経由して、DNCとクリントン陣営から16万ドル以上の支払いを受けていた。

a) 2016年10月の最初の申請において、またその後のいずれの更新においても、当時スティール文書の政治的な出所はDOJとFBIの上層部に知られていたにもかかわらず、DNC、クリントン陣営、またどのような党・陣営であっても、それらがスティールの取り組みに対する資金提供で果たした役割について開示、言及していない。

b) 最初のFISA申請では、ある指定された米国人のための仕事をしていたと記述されているが、(当時DOJはスティール文書に政治的な関与がある事を把握していたにもかかわらず、)フュージョンGPSと代表者のグレン・ジョンソンの名前を挙げていない。この人物はDNCの代理人を務める法律事務所(パーキンス・クーイ)から支払いを受けていた。

2) カーター・ページのFISA申請については、マイケル・イシコフによるヤフー・ニュースの2016年9月23日付の記事でも幅広く言及されており、記事ではページが2016年7月にモスクワを訪れたことに焦点を絞っている。この記事はスティール文書の裏付けとならない。それはこの記事自体、スティール自身がヤフー・ニュースにリークした情報を元にしたものであるためだ。ページのFISA申請では、スティールがヤフー・ニュースに情報を直接提供していないという誤った評価をしている。スティールは、2016年の9月にフュージョンGPSの指示を受けてヤフー・ニュースとその他複数のメディアに接触したことを、英国の裁判所で認めた。パーキンス・クーイはスティールがメディアに最初に接触したことに気づいていた。というのも同事務所が、2016年にワシントンC.で、少なくとも1回の会議を主催してこの件について話し合ったためだ。

a) スティールは保留処分となり、その後FBIが最も深刻な違反と定めている理由、つまり2016年10月30日のデイビッド・コーンによるマザージョーンズの記事において、FBIとの関係を許可なくマスコミに開示したことで、FBIの情報源から解除された。スティールは、それ以前の9月にヤフーとその他の媒体と未公開の接触を行ったことで、解除されているべきだった。それは、10月にページの申請がFISCに提出される前のことだった。だがスティールは不適切に隠蔽し、それらの接触についてFBIに虚偽を述べた。

b) スティールが多数のマスコミと接触したことは、情報源対応の基本的な規則—機密保持—に違反しており、スティールの、FBIの情報源としての信頼性が低下したことが実証されることになった。

3) スティールは情報源から解除される前後において、当時の副司法長官補佐のブルース・オーを通じてDOJと接触を続けていた。オーはDOJの幹部職員であり、イエーツ元司法副長官と、またその後はローゼンスタインと緊密に働いていた。大統領選挙の直後、FBIはオーの聴取を開始し、スティールとの間のやり取りを記録した。例えば2016年9月にスティールは、オーに当時の大統領候補者であるトランプに対する個人的な感情を認め、「ドナルド・トランプが当選しないように必死であり、彼が大統領にならないよう情熱を傾けている」と述べていた。スティールの明確な偏向は、当時オーによって記録され、その後FBIの公式ファイルにも記録された。しかし、ページのFISA申請には全く反映されなかった。

a) これと同じ時期に、オーの妻はトランプに対する政敵調査の育成を補佐するために、フュージョンGPSに雇用されていた。オーは後に、DNCとクリントン陣営がフュージョンGPSを通じてその資金を支払った、妻による政敵調査の情報を全てFBIに提供した。オーとスティール、そしてフュージョンGPSとの関係は、不可解にもFISCには隠蔽されていた。

4) FBIの防諜部門の幹部、ビル・プリースタップ副部長によると、スティール文書の実証作業は、ページの最初のFISA申請の時点では「初期段階」にあった。スティールが解除された後、FBI内部の独立チームが実施した情報源の検証報告では、スティールの報告書は最小限にしか実証されていないと評価していた。ところが、2017年1月の初めに、コミー長官は、スティール文書が—2017年6月の本人の証言によると—「わいせつで信憑性が確認されていない」ものであったにもかかわらず、トランプ次期大統領にその文書の概要を報告した。FISA申請では、スティールが過去に、他の無関係な件について信頼できる報告を行っていたという実績に依存していた一方で、彼が反トランプ的な金銭上と思想上の動機を持っていたことを無視、あるいは隠蔽していた。その上マッケイブ副長官は、2017年12月に議会で証言し、スティール文書の情報がなかったら、FISCに監視令状が請求されることは全くなかっただろうと述べた。

5) ページのFISA申請には、トランプ陣営の顧問であったジョージ・パパドポロスに関する情報についても言及しているが、ページとパパドポロスの間には協力や共謀の証拠は全くない。パパドポロスの情報は、FBI捜査官のピーター・ストラックが2016年7月下旬に防諜捜査に着手するきっかけとなった。ストラックは、不倫相手のFBI弁護士であるリサ・ぺージ(カーター・ページとは既知の関係なし)との間で不適切なメールのやり取りをしていたために、特別検察官の事務所によってFBIの人事部門に異動となった。この両名はトランプに反対で、クリントンに賛成の明確な偏向を示しており、ストラックはクリントンの捜査も担当していた。ストラックとリサ・ページの間のメールは、捜査に関わる幅広い会話を示しており、マスコミへのリークを画策し、トランプの大統領当選に対抗した「保険的」方策について、マッケイブ副長官との間で話し合った会議についての内容も含まれている。

英語の原文はこちら

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