<引用元:National Review 2017/10/30>
(By アンドリュー・C・マッカーシー)
「米国に対する謀略」という見出しに騙されてはいけない
ポール・マナフォートの起訴は空騒ぎだ・・・マナフォートに圧力をかけるという手段という意味しかない。それがロバート・モラー特別顧問の目的であり、(ここでも、ここでも、そしてここでも)我々は3カ月の間論じてきた。
訴因1の「米国に対する謀略」という見出し(起訴状の23ページ)に騙されてはいけない。今回の起訴は民主党とメディアが呼ぶ「我々の民主主義に対する攻撃」(つまり、クレムリンがトランプ陣営と「共謀」して2016年の選挙に干渉したとされている話)とは全く関係がない。基本的にマナフォートとその仲間のリチャード・W・ゲイツは(a)2016年の選挙の何年も前に(主として2006年から2014年にかけて)、ウクライナの未登録の外国代理人として得た約7,500万ドルを米国政府から隠蔽することを企てたことと(b)マネーロンダリングの謀略の容疑をかけられている。
全部で12の訴因があるがその二つが主要な容疑だ。
いわゆる米国に対する謀略の中で重要なことは、マナフォートとゲイツが銀行秘密法で必要とされる書類を財務省に提出することを怠ったことだ。特に国外の銀行口座を所有する米国人は、残高が1万ドルを超える口座に関して毎年任意の時点で「FBAR」(外国銀行口座報告書)と言われるものを提出しなければならない。また連邦法によれば、国外の口座は年間の所得税申告について公開する必要がある。マナフォートとゲイツは国外の口座を管理しており、それを通してウクライナの政治コンサルティングによる収入が流れ込み、正確なFBARと税務申告を怠ったと言われている。更に2008年から2014年にかけて外国代理人としての登録を怠り遅まきながら登録した際には虚偽の証言をしたとされている。
マネーロンダリングの謀略については、「特定の非合法的活動」を推進する意図を持って米国の内外に資金を移動したとされている。その活動とは未登録の外国代理人としての活動であったとされている。
一見してモラーによる起訴は、少なくとも部分的にはあやふやで過剰なもののようだ。
ウクライナの資金は2006年にまで遡るものだが、訴因に含まれているのは2012年以降の未提出のFBAR(訴因3から9)だけだ。これはおそらく5年の時効があるのでそれ以前のものは起訴を免れることが理由だろう。謀略だとする訴因(訴因1)の目的は明らかに、すべての範囲の企てを立証するように装って、そうでなければ時効になってしまうはずの法律違反を証明するためだ。
外国代理人としての登録を怠ったという罪(訴因10)は確かなものかもしれないが、司法省がめったに犯罪として起訴することのない違反だ。その人物の行動が登録の必要性につながるのかどうかについてはしばしば曖昧な点があるので、司法省の慣例では登録を推奨はするがそれを怠ったことで起訴することはない。
マナフォートとゲイツが外国代理人の登録を後に行った際に虚偽の証言をしたことはあり得るが、モラーのチームは一つの罪を二つに変えてしまったようだ。つまり立法趣旨を無視した汚い検察の戦術だ。
具体的には、議会は特定の外国代理人登録についての背景での偽証を軽罪とみなし、最高6カ月の懲役を求めている。(合衆国法典第22編、622条(a)(2)参照)モラーが訴因11で訴えている罪がそれだ。しかし、モラーは更に加えて同じ行為に対して二つ目の偽証訴因(訴因12)を付け加えている。刑法(合衆国法典第18編1001条)によれば、政府当局に対する供述に虚偽または重大な不作為がある場合、重罪となり最高5年の懲役を科せられるのでそれは犯罪となる。
政府に偽証することなしに外国代理人登録の申請について偽証することはできないことは明らかだ。結果としてマナフォートは、モラーが全く同じ罪を二つの別々の訴因で訴えることで一事不再理の原則を犯し、外国代理人登録申請について虚偽の情報を提供したという罪を軽罪に過ぎないとみなす立法趣旨を損なっていると訴えるだろう。
最後にマネーロンダリングの謀略の容疑(訴因2)は確実性のあるものとは程遠いように思える。ロンダリングで有罪となるには、資金を隠し始める前にその資金が犯罪活動による収益となっていなければならず、その隠蔽方法として次の二つがある。(a)口座を移動させるか資産を購入することでその形態を変えること。(b)連邦法における報告の必要条項を回避すること。さて、クレムリンの言いなりになっているウクライナの不穏当な政治派閥から「政治コンサルティング」を偽装してお金を受け取るのは確かにひどいことだ。しかし、それは米国の法律の違反ではない。上で要点を述べたように、違反となるのは様々な開示義務を順守しなかった場合だ。モラーはこのことを認識しているようだ:マネーロンダリングの訴因では、マナフォートとゲイツがウクライナの政党から支払いを受けたことが違法だと訴えていない。そうではなく、未登録の外国代理人として働く企てを推進するために、そして特に登録の要件を回避するために資金を動かしたことを訴えているのだ。
それは拡大解釈のように思える。確かにマネーロンダリングの関連法には「特定の非合法的活動」「1938年の外国代理人登録法に対する違反」といったものが定義に含まれている。しかし、起訴するには資金が最初から非合法的活動による収益であったことを合理的な疑いの余地なく証明することが必要だ。その上、マナフォートとゲイツが(a)資金が不法な活動による収益であることを知っており、(b)外国代理人の登録義務を回避するという明確な意図を持って資金を移動させたことを、合理的な疑いの余地なく証明しなければならない。従って、ウクライナの資金が米国の法律で違法なものであり、マナフォートとゲイツがそれを違法だと知っており、自分たちの活動に外国代理人登録が必要だと知っており、登録を怠るという違反を推進する意図があったということに疑われる点があればこの訴因は成立しないだろう。
ポール・マナフォートの立場からでさえ、この起訴には目に見えるほどのものはないだろう。開示違反と資金移動の疑わしい容疑ぐらいのものであり「米国に対する謀略」という深刻な容疑とは言えず、トランプ陣営に一時的に参加して注目を集めることがなければなかった話だろう。
トランプ大統領の立場からは、この起訴は恩恵でありそこから特別顧問に起訴が可能な共謀の論拠はないと主張できる。ジェームズ・コミーFBI元長官がトランプは捜査対象ではないと何度か認めたことが再確認されているようだ。そしてマナフォートに検察が強硬的な手段を取ろうとしているように見える限り、大統領は今後も自信を魔女狩りの犠牲者と表現することができるだろう。