トーマス・ガンダーソンは最初に物音を聞いたとき、スピーカーの故障か、もしかしたら誰かが花火を打ち上げたのだろうと思った。
しかし、それから叫び声が聞こえ、カリフォルニアのニューポート・ビーチから来た28歳の青年は、自分が戦場の真ん中に立っているのだと悟った。
ラスベガスの大量殺戮が始まってすぐに、トーマスは他のコンサートの常連客と一緒に人々を安全な場所に避難させた。
「他人のために自分の命の危険を冒して救助している人たちがたくさんいた」とトーマスは電話でのインタビューで私に言った。
混乱と殺戮の中で、トーマスは今起きていることが本当に起きていることなのだろうかとずっと思っていた。
「弾が外れていく音が聞こえたが、これはうそだ、うそなんだと思い続けていた」とトーマスは語った。
一瞬の後、一発の弾がトーマスの脚に深く命中した。
「私は地面にまっすぐ倒れた。痛くはなかった。体が麻痺していた」とトーマスは語る。「まわりに血の海ができた・・・貫通して。全くどこもかしこも」
トーマスは客席の列の後ろに体を引きずって隠れたと言った。
「そのとき怖くなってきていた」トーマスは言う。「血がすっかり流れ出てしてしまうのではないかと思った」
わずか数分の間に二人の若い女性がトーマスのところにやって来て応急の救命処置を施した。一人が彼の脚をベルトで巻き、もう一人が数名の男性に安全な場所へ運ばせた。
トーマスは自分は幸運だと考えている。弾は完全に貫通していた。ふくらはぎの筋断裂と神経の痛みを患ったが弾は骨と動脈をそれていた。
「立つのが難しい・・・とても痛いんだ」とトーマスは言った。
そのことから考えると4日に起きたことは更に目を見張るようなことだったと言える・・・トーマスはトランプ大統領とファーストレディの訪問を受けたのだった。
「人生で最高の瞬間の一つだった」とトーマスは私に言った。
激しい痛みがあったが、トーマスは立ち上がって大統領に挨拶することを決意した。
「立ち上がって大統領と握手するつもりだと家族に伝えた・・・大統領と我々の指導者、そして我が国に対する敬意からそうするのだと」とトーマスは私に話した。
そしてトーマスはその通りのことを行ったのだ。苦痛に顔をゆがめながら大統領に挨拶し握手をした。心を打つ瞬間を収めたフェースブックの動画は100万人以上(訳注:この記事の編集時点で2千万を超えている)の人が視聴した。
「この男はタフなようだ」と大統領は表明した。
トーマスは、トランプ大統領とファーストレディは「自分と家族にとても優しかった」と語った。
「それは人生で最も謙虚な気持ちにさせられる経験の一つだった。大統領がわざわざここに来て握手してくれて、何か必要な物があれば言ってくれと言ったのだから」と彼は言った。
それは愛国心の強いアメリカ市民と大統領の間の、深く心のこもった瞬間だった。我々国民が一つであること・・・神の下に一つの国であることを優しく教えてくれる出来事だった。
トーマス・ガンダーソンに神のご加護を。