テルアビブ -
以前ウィキリークスが公開したヒラリー・クリントンの2016年大統領選挙のリーク電子メールが、新たな重要性を持つようになるかもしれない。なぜならそれが、ドナルド・トランプ・ジュニアとロシア人弁護士との会談についての報道で持ち上がった重要な問題と関係しているからだ。
問題のメールは、クリントン陣営の外交報道担当で、迅速対応広報チームのメンバーであったジェシー・レイリックから送られたものだとされていた。
そのやりとりはまだニュース媒体の注意を引いておらず、ウィキリークスのアーカイブの中で検索可能になっているが、その中でレイリックは「ブルームバーグの記事を葬った」と書いている。その記事とは、選挙陣営がマグニツキー法として知られる反ロシアの法律にクリントンが反対しているということを、50万ドルの報酬でビル・クリントンがモスクワで行った演説に結び付けようとしたものだ。
「5月21日 毎晩の報道トラフィックの要約」と題された2015年5月21日のメッセージは、レイリックから選挙陣営の「HRCRapid(訳注:HRCはヒラリー・ロダム・クリントンの意と思われる)」というグーグル・グループに送信され、ジョン・ポデスタ選対本部長のGmailアカウントのメールのリークによって暴露された。
選挙陣営が実行したレイリックの報道対応のリストには次の内容があった。
調査チームの協力により、HRC(訳注:ヒラリー)がマグニツキー法に反対であることを、WJC(訳注:ビル・クリントンのこと)がモスクワで行った50万ドルの演説に結び付けようとしたブルームバーグの記事は我々が葬った。
ピーター・シュバイツァーのベストセラー、「クリントン・キャッシュ」によると、ニューヨーク・タイムズは2015年4月に、クリントンのモスクワでの50万ドルの演説と、採掘企業ウラニウム・ワンの取引に対してロシアの専有的支配が増していることにつながりがある可能性について報道した。
その記事では「その取引でアメリカのウラン産出能力全体の五分の一の支配権をロシアに与えた」と報道された。
同新聞社は更に次のように報道していた。
クリントンはモスクワの演説で、クレムリンとつながりのあるロシアの投資銀行から50万ドルを受け取った。それはウラニウム・ワンの株を推進している銀行だった。
マグニツキー法は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領から強い反発を受けているが、ロシア人弁護士のセルゲイ・マグニツキーの2009年の死亡に関わったという非難を受けた、ロシア政府当局者に制裁を加えることを意図したものだ。マグニツキーは汚職に反対する内部告発者であり、伝えられるところでは殴られて獄中で死亡した。
フォーリン・ポリシー紙は、2010年にベン・カルダン上院議員(民主党、メリーランド州)がマグニツキー法案を提案したとき、(クリントンが国務長官を務めた)オバマ政権は、アメリカとモスクワとの間で非常にもてはやされていた「リセット」の試みを損なうことを恐れて、当初尻込みしたと述べていた。
同紙は、クリントンはその法案に対する非難を先導することに協力したと報道していた。「政権は、ヒラリー・クリントンに始まってジョン・ケリーまでが、マグニツキー法を止めるためにできるすべてのことを行った」と、アメリカのヘッジファンド経営者のビル・ブラウダーは述べた。ブラウダー氏は法案を推進するために議会でロビー活動に協力していた。
ワシントン・ポストのコラムニスト、ジェニファー・ルビンは、「ヒラリー・クリントンは悲惨なロシア政策の中で自分の役割を忘れている」と題した記事の中で、クリントンの国務長官時代に言及し、「なぜ国務省はそれほど長い間マグニツキー法を阻止しようとしたのだろうか?」と疑問を投げかけた。
2012年、影響力の強い議員たちがジャクソン=バニク修正条項を廃止するために、マグニツキー法を政権の立法推進の取り組みに分類するよう要求したときに、その法案は成立した。法案はモスクワがアメリカと正常に貿易する能力を否定するものであったため、その動きというのは、アメリカとロシアの貿易関係を緩和するものだった。
2012年6月20日、クリントンはウォールストリート・ジャーナルに「ロシアとの貿易はウィン・ウィンである」と題した論説を寄稿し、その中で彼女はジャクソン=バニクを維持すれば「ロシアの反アメリカ感情を煽るだけだ」と説明しようとした。
「ロシアのWTO加盟は間もなく紛れもない事実となる。永続的な通常貿易関係を延長しないことではロシアを罰することにならないし、モスクワの態度を変えるための手段を与えることにもならない」と彼女は述べた。
最後にクリントンは、マグニツキーの死に言及し、「私たちはこれらの問題に対処するために議会との協力を続けていく」と書いていた。
クリントンが当初マグニツキー法に反対し、ロシアとの貿易の制約を緩和しようと取り組み、そして彼女の夫がウラニウム・ワンの取引に近い団体とつながりをもっていることに対して提起される疑惑にも関わらず、クリントン陣営の元報道官ブライアン・ファロンは、火曜日のCNNに出演し、「選挙運動で提供された協力に対する見返りの一部」だろうとして、トランプ大統領のロシアに対する外交政策を非難していた。
その一方で、マグニツキー法は、トランプ・ジュニアとロシア人弁護士との会談についての記事に関連して、ここ数日の間にニュースの話題になった。
ニューヨーク・タイムズが日曜日に、「ニューヨーク・タイムズが説明を受けた極秘の政府記録」を引用して、トランプが共和党の候補者に決まった2週間後にトランプ・ジュニアが「クレムリンとつながりを持つ」とNYタイムズが主張するロシア人弁護士のナタリア・ベセルニツカヤと会談を行ったという独占記事を発表して、その問題が浮上した。
NYタイムズはその後、ベセルニツカヤがクリントンのスキャンダルを握っていると主張する第三者によってその会談が行われることになったことを示す、やりとりの内容とされるものを発表した。政治的な選挙陣営が、敵対陣営の不名誉となるような情報を持っていると主張する人物と会談するのは異常なことではない。
トランプ・ジュニアの話では、ベセルニツカヤはクリントンのスキャンダルを提供するのではなく、その時間を使ってマグニツキー法に対する不満を表した。
「その女性は自分で公言したように、政府当局者ではありませんでした。私たちが言ったように、彼女は何の情報も持っておらず、養子の政策とマグニツキー法について話したかったのです。背景としてとらえれば、これが起きたのは現在のロシア騒ぎが流行する前のことでした。ロブ・ゴールドストーンが今日報道陣に述べたように、その会談全体がこれまで聞いたことのある中で最も無意味なことでした。私は実際それによって動揺させられました」とトランプ・ジュニアは火曜日の声明の中で述べた。
ベセルニツカヤはNBCとのインタビューで、クレムリンとのつながりを否定した。
トランプ・ジュニアはその後、会談が決まった経緯を示す一連のメールを公開した。
(この記事はジョシュア・クラインによる追加調査で執筆された。)